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『Room 』
第10章 旅行
月明かりだけが、鬱蒼とした森の木々に光を照らす静な夜。
そんな暗闇の中
ペンションの外に設置されたベンチには、どこか虚ろな目をした洋平が月を見上げていた。
―はぁ…
一つため息をはく。
ーなんだったんだ、さっきのは…
無造作に頭をかきむしりながら先程の自分を思い出す。
低く冷たい声色の自分。
ふわふわとした感覚の中で勝手に動く体。
今までに幾度か見た夢。
そう思っていたが…
ー夢じゃないのか…?
そう…今までとは違う覚醒。
リアルに洋平の感覚が戻ったのは、歩いているときだった。
夢で歩いていた。が、確かにしっかりと床を踏みしめる自分になった。
夢の中の景色がそのまま自分の前に現れた。
頭が追い付かない。
兄貴たちに聞けば答えはきっと直ぐにでるだろう。
だが、洋平は戸惑っていた。
聞いてしまえば、自分はどうなるのだろう。
再び洋平は頭を抱える。