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降りしきる黄金の雫は
第5章 5 金木犀はこう言った
「初めに集合意識の中にいた。
大元の木から切り離された時に今の『私』は生まれる。
集合意識だった時の記憶もある。
住み慣れた土から掘り出され、形を小さく整えられ、多くの同胞たちと船に乗り、この国へやってきた。
風土が変わっても秋になると花を咲かせてきた。
しかし咲かせても咲かせても実りがない。そうこの国にはつがう雌がいないのだ。
そのことに気づいたのは親木から切り離されて、植えられ、何度も花を咲かせた後だった。
更に頻繁な植え替えですっかり花を咲かせる力が残っていなかった。
あのまま枯れていくのだろうという時にお前が私に血を与えたのだ」
僕は聞き入っていたが次の一言ではっと我に返る。
「この姿になったおかげでもう一度、お前から精をもらうことができ、花を咲かせた。」
「えっ? 今、なんですって? もう一度?」
「そうだ。昨晩、お前から精を吸った」
「まさか――」
昨晩の不思議な感覚と淫らな感覚が身体に走ったことを思い出す。
「今日は礼をしよう」
「礼? 金木犀の精さん、あの礼なんかいいです」
「お前は強くない。吸ったままでは弱ってしまう。私はもう力が満ちている」
深い強い視線が僕を催眠術にかけるように絡む。お礼とはなんだろう。木の恩返しなどどうなるのだろう?
彼の大きな両腕が僕に伸びてきて抱きしめる。
「あっ――」
体温は感じないがしなやかな肉体を僕は受け止めた。
大元の木から切り離された時に今の『私』は生まれる。
集合意識だった時の記憶もある。
住み慣れた土から掘り出され、形を小さく整えられ、多くの同胞たちと船に乗り、この国へやってきた。
風土が変わっても秋になると花を咲かせてきた。
しかし咲かせても咲かせても実りがない。そうこの国にはつがう雌がいないのだ。
そのことに気づいたのは親木から切り離されて、植えられ、何度も花を咲かせた後だった。
更に頻繁な植え替えですっかり花を咲かせる力が残っていなかった。
あのまま枯れていくのだろうという時にお前が私に血を与えたのだ」
僕は聞き入っていたが次の一言ではっと我に返る。
「この姿になったおかげでもう一度、お前から精をもらうことができ、花を咲かせた。」
「えっ? 今、なんですって? もう一度?」
「そうだ。昨晩、お前から精を吸った」
「まさか――」
昨晩の不思議な感覚と淫らな感覚が身体に走ったことを思い出す。
「今日は礼をしよう」
「礼? 金木犀の精さん、あの礼なんかいいです」
「お前は強くない。吸ったままでは弱ってしまう。私はもう力が満ちている」
深い強い視線が僕を催眠術にかけるように絡む。お礼とはなんだろう。木の恩返しなどどうなるのだろう?
彼の大きな両腕が僕に伸びてきて抱きしめる。
「あっ――」
体温は感じないがしなやかな肉体を僕は受け止めた。