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降りしきる黄金の雫は
第6章 6 診察
山道を上がっていき、家と家の間隔が広くなってくると道幅は狭くなっていき、やがて倉田邸が見えた。
砂利が敷かれた駐車場に車を置き、荷物を出していると待ち構えていたらしくご主人が声を掛けてくる。
「おはよう。早くからすまないね」
「おはようございます。いえ、大丈夫ですよ。どの植木ですか?元気がないというのは」
「こっちなんだ。植木というか、裏庭に元々生えていた金柑で、うちが植えたものじゃないしほっといたんだけど」
家の周りをぐるりとまわり裏に出ると一本の金柑の木がひっそりと立っている。緑の葉に茶色い斑点が出来ていてさらにうらぶれた雰囲気を醸し出している。かわいそうに『かいよう病』にかかっている。
「これって病気だよね。なんかまだらになってて気持ち悪くてさあ」
「ええ、かいよう病というもので、症状の出ているところを取り除いて、雨風を防いでやれば大丈夫ですよ。でも、いきなりですね」
「ああー。あれのせいかな」
倉田さんは空に向かって指をさすので僕も上を向くと、確か前に合ったヤマボウシの枝がバッサリと失くなっている。
「えっ、切っちゃいました?」
「え、ああ、うん。だめだったか」
「いやあ、ダメというか。あの枝がたぶん金柑の雨よけになっていたんじゃないかと。この病気は雨で広がりやすいものですから」
「そんなものかね。へえ。雨には降られた方がいいとばっかり思っていたよ」
「そうですね。確かに雨は大事ですからね。とりあえず金柑は処置しておきますから」
「頼むよ。俺はどっちでもいいんだけど、正月、遊びに来る孫が金柑を楽しみにしてるらしくってさ」
「そうですか。大丈夫ですよ。そうだ、ヤマボウシの枝を切った後になにか処置をされてます?」
「え?切った後?なにすんの?」
「切り口が腐敗する場合がありますので保護剤を塗るんです。ついでに塗っておきますよ」
「うーん。剪定をするのも面倒だねえ」
はあっと大きなため息をついて倉田さんは家のほうに戻っていった。木は何も言わない。痛いともかゆいとも。僕をそれを聞きたいと願っている。
砂利が敷かれた駐車場に車を置き、荷物を出していると待ち構えていたらしくご主人が声を掛けてくる。
「おはよう。早くからすまないね」
「おはようございます。いえ、大丈夫ですよ。どの植木ですか?元気がないというのは」
「こっちなんだ。植木というか、裏庭に元々生えていた金柑で、うちが植えたものじゃないしほっといたんだけど」
家の周りをぐるりとまわり裏に出ると一本の金柑の木がひっそりと立っている。緑の葉に茶色い斑点が出来ていてさらにうらぶれた雰囲気を醸し出している。かわいそうに『かいよう病』にかかっている。
「これって病気だよね。なんかまだらになってて気持ち悪くてさあ」
「ええ、かいよう病というもので、症状の出ているところを取り除いて、雨風を防いでやれば大丈夫ですよ。でも、いきなりですね」
「ああー。あれのせいかな」
倉田さんは空に向かって指をさすので僕も上を向くと、確か前に合ったヤマボウシの枝がバッサリと失くなっている。
「えっ、切っちゃいました?」
「え、ああ、うん。だめだったか」
「いやあ、ダメというか。あの枝がたぶん金柑の雨よけになっていたんじゃないかと。この病気は雨で広がりやすいものですから」
「そんなものかね。へえ。雨には降られた方がいいとばっかり思っていたよ」
「そうですね。確かに雨は大事ですからね。とりあえず金柑は処置しておきますから」
「頼むよ。俺はどっちでもいいんだけど、正月、遊びに来る孫が金柑を楽しみにしてるらしくってさ」
「そうですか。大丈夫ですよ。そうだ、ヤマボウシの枝を切った後になにか処置をされてます?」
「え?切った後?なにすんの?」
「切り口が腐敗する場合がありますので保護剤を塗るんです。ついでに塗っておきますよ」
「うーん。剪定をするのも面倒だねえ」
はあっと大きなため息をついて倉田さんは家のほうに戻っていった。木は何も言わない。痛いともかゆいとも。僕をそれを聞きたいと願っている。