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降りしきる黄金の雫は
第7章 7 雨
 職場につくと、社員の大黒君が一番若い坂下君に造園技能士の資格について説明をしていた。入社して実務経験を2年得たので2級造園技能士の資格を取るつもりなのだ。坂下君は自信なさげな態度をとっている。

「おはよう」
「あ、おはようございます。影島さん」
「おはようございます」

「聞いてくださいよ。坂下ってば落ちる心配ばっかりしてるんですよ」
「だって俺、あんまり覚えよくないし」
「まーた、そんなこと言って。俺だって頭よくねーよ」

大黒君よりも大柄な坂下君は気は優しくて力持ちと言ったタイプで更に心配性だ。

「大丈夫だよ。ここでちゃんと仕事できてるし、坂下君の説明はお客さんにわかりやすいって評判だよ」

僕がそう告げると少しだけ明るい表情を見せ「じゃ頑張ろうかな」と坂下君がつぶやいた。

「そうそう、影島さんの言う通りだよ」

大黒君は励ましながら坂下君の肩を叩いている。二人の隣を抜けて席に着こうとすると大黒君が「あれ?」っと声をあげた。
「ん?」
振り返ると「なんか花の匂いがするなあ」と周囲を嗅いだ。そして僕の方に着目し「影島さんからかあ」と鼻先をこちらに向けた。

「え、そう?そんな匂いするかな」

袖口をそっと鼻腔に近づけたが自分では感じない。

「しかも今日の影島さんてなんかツヤツヤしてませんか?」
「ツヤツヤ?」
「ああ、ほんとだ。なんか綺麗」

「気のせいだよ。気のせい」
「かなあ」

僕はそそくさと席に着きパソコンの電源を入れて仕事に集中するふりをした。
昨日の行為が見られたような気になって僕は内心ドギマギする。あの行為で自分が何か変わっているのだろうか?深く考えないように新しい造園のプランを企画することにした。

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