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降りしきる黄金の雫は
第7章 7 雨
雨のせいかバスも遅延し、帰宅もいつもより30分ほど遅かった。
薄暗い庭先でしとしとと雨に打たれ、金木犀は佇む。地面には黄金の花々が散らされていた。それでも艶やかな緑の葉はしっかりと雨を受けとめ堂々と立っている。
しゃがんで小さな花の一つ一つを眺める。つい朝まで黄金の紙吹雪が立体的に舞っているようだったのに、今は平面にオレンジ色のプールを作っている。中途半端に花を残したりせず一斉に散ってしまう金木犀の花言葉『気高い人』を思い出す。
「また来年かなあ」
こんなに秋を惜しむのは初めてだとしみじみ思った。
長雨の音を聞きながら眠っていると温かいような、それでいてひんやりとしたものが頬を撫でる。
ハッと目を開けると桂さんがいた。
「居たんだ! もう会えないかと……」
「花が散ったからか?」
「ええ……」
彼の様子は特に変化がない。相変わらず豪華で威風堂々とし尊大だ。
「咲かせるのに少し力が必要だが大したことはない。長く咲かせたりもしないしな」
「そうですか。あんなにいい香りなのに開花時期が短いから残念ですよね」
「お前はこの香りを好むか」
「そりゃあ」
桂さんから漂う甘い香りをすうっと吸い込むととても安らぐ。万民受けしそうだと思う香りだが、実際、この香りを楽しむのは日本と中国だけで他の国の人たちにこの香りは知られておらず、苦手な人もいるらしい。
花の香りというのは受粉のために虫を惹きつけるものが多いが金木犀の香りを多くの虫が嫌う。例えばハナアブは好むが蝶は逃げる。金木犀が好き嫌いが多いのか、金木犀に対して好き嫌いがはっきり分かれるのか不思議な話だ。
薄暗い庭先でしとしとと雨に打たれ、金木犀は佇む。地面には黄金の花々が散らされていた。それでも艶やかな緑の葉はしっかりと雨を受けとめ堂々と立っている。
しゃがんで小さな花の一つ一つを眺める。つい朝まで黄金の紙吹雪が立体的に舞っているようだったのに、今は平面にオレンジ色のプールを作っている。中途半端に花を残したりせず一斉に散ってしまう金木犀の花言葉『気高い人』を思い出す。
「また来年かなあ」
こんなに秋を惜しむのは初めてだとしみじみ思った。
長雨の音を聞きながら眠っていると温かいような、それでいてひんやりとしたものが頬を撫でる。
ハッと目を開けると桂さんがいた。
「居たんだ! もう会えないかと……」
「花が散ったからか?」
「ええ……」
彼の様子は特に変化がない。相変わらず豪華で威風堂々とし尊大だ。
「咲かせるのに少し力が必要だが大したことはない。長く咲かせたりもしないしな」
「そうですか。あんなにいい香りなのに開花時期が短いから残念ですよね」
「お前はこの香りを好むか」
「そりゃあ」
桂さんから漂う甘い香りをすうっと吸い込むととても安らぐ。万民受けしそうだと思う香りだが、実際、この香りを楽しむのは日本と中国だけで他の国の人たちにこの香りは知られておらず、苦手な人もいるらしい。
花の香りというのは受粉のために虫を惹きつけるものが多いが金木犀の香りを多くの虫が嫌う。例えばハナアブは好むが蝶は逃げる。金木犀が好き嫌いが多いのか、金木犀に対して好き嫌いがはっきり分かれるのか不思議な話だ。