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降りしきる黄金の雫は
第11章 11 異変
「田中さんの庭はうまく落ち着きましたよ」
「そうかそうか。木が小さいうちは寂しいかもしれないけど、すぐに賑やかになるよ」

「ええ。スカスカだなあとおっしゃってたんですが、木のための十分なスペースのことを説明すると納得してくれましたよ」

「うんうん。植え替えるって労力のほうが大変だからなあ」
「木、自身にも負担ですからね」

植え替えられた金木犀の桂さんを想う。

「ほうー。先生はますます木に優しくなってるねえ」
「え、いえ。まだまだですよ」

桂さんにわがままばかり言ってしまっていることを反省する。

「さて、そこら辺が秋入荷の苗木だよ。桜が欲しいんだっけ」
「はい。今度、街中のメイン通りを一本はいった道を桜並木にしたいそうなんです」

「桜並木かあ。あの通りはあんまり住宅なかったっけ?」
「ええ。公園と駐車場くらいだったかな。そんなに狭い間隔にはならないから大丈夫かなって思うんですけど」

「うん。並木道を作るのはいいけど、育った木の樹高やら剪定やら病気予防なんか考えないでやっちまうもんだから、結局切っちまうことが多いからなあ」
「そうなんですよね。植える場所も狭くて、地盤を固められるから根が伸ばせないし……」

多くの植物は黙って人の見る目を楽しませ、新鮮な酸素を与えてくれている。病気になって、切られ、焼却されても沈黙のままだ。
中村さんと二人でなんとなくそれらの木々を想い黙とうをささげる。

「そこにあるのが桜と、こっちは梅だな。良さそうなの選んでよ」
「ええ」

一メートルほどの桜の苗木が数十本ある。
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