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降りしきる黄金の雫は
第12章 12 香り
身体を揺さぶられ、名前を呼ばれて目を覚ました。

「芳樹、こんなところでうたた寝か?」
「え、あ、先輩」

僕は身体を起こして辺りを見回すともう日は傾いていて薄暗かった。

「どうしたんですか? いきなり」
「ん、いや、あれからなんかあんまり話してなかったと思ってな」

先輩はすっと背を向け、金木犀の方へ視線を移した。以前、彼から告白をされた後、意図的ではないが個人的に話し合う機会が減っており、距離感があった。

「なんだか忙しくて先輩と昼も別々でしたね」
「ん」

金木犀に先輩が近づいたとき、さあっと風が吹き枝がしなり彼の頬をぴしゃりと打った。

「いてっ、なんだ? ――なんかこの木に嫌われてる気がするな」
「まさか」

そういいながらも、もしかして桂さんが意図的に?と思わずにいられなかった。夕暮れが2人の、いや3人の影を長く伸ばす。
言い様のない沈黙の重圧に耐えかね、僕は先輩を食事に誘った。

「近所に蕎麦屋ができたんです。どうですか?一緒に。歩いて5分くらいですよ」
「蕎麦か。たまにはいいな」

いつも焼き肉屋以外に誘うと、一言不満が出るのだが今日はそんなこともなく乗り気な様子を見せる。

「じゃ、少し支度してきます」
「おう」

スウェットからシャツとチノパンに着替え、桂さんに「いってきます」と声を掛けて先輩と出かけることにした。
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