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降りしきる黄金の雫は
第13章 13 並木道
桂さんに何か庭にほかの木々を植えようかと提案したが、どちらでも良いというそっけない返事だった。

「お前がしたければするといい」
「そうですか。好きな花とかないですか?」
「好き――か」

以前なら『ない』と一言で終わっていたが桂さんが思案してくれている。それが嬉しい。

「グミがよかろう。実を食せ」
「ああ、グミですか。懐かしいなあ。昔、入院してた病院の庭に植えてあってこっそり食べたことがあったなあ」

「ここは日当たりが良いからよく育つだろう」
「そうですね。今ちょうど植えられそうな時期ですね」

桂さんと一緒に赤いグミの実を眺められたら楽しいだろう。

「しかし、なんでもよく知ってますね」
「長く生きておるしな。人からもだが、動物からも情報を得る」

「へえー。そうなんですかあ」
「だが、得た情報を使うのはこの姿になってからだな」

何千年も生きている大樹は恐らく知恵の宝庫なのだろう。しかしそれを伝えたり、使ったりすることはないのだろう。
ただ人は畏怖し、想像し、そこから知恵を拝借しようと奔走する。樹木を崇拝し宗教も起きる。
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