この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
降りしきる黄金の雫は
第15章 15 献身
『ナカムラ・グリーン』に寄り、中村さんにも挨拶をした。
「まさか……。先生……そんなに若いのに……」
「すみません」
「なんで、謝るのよ……」
中村さんもショックを受け、タロウを撫でる手が震えている。タロウは苦手な金木犀の香りがする僕に向かってくーんくーんと悲し気に鳴いた。
それでも彼は前向きさを発揮して仕事の合間に温泉や、自然食のレストランに連れて行き、最後には神社にお参りしたりした。
「俺は……、信じないぞ。絶対治る。来月の検査できっと誤診でしたっていうさ」
「ありがとうございます」
強い先輩からの愛情を感じるが何も結局返せない。何かできることがあるだろうか。
「僕はしてもらってばっかりでしたね」
「何言ってるんだよ。そんなことないから、細かいこと気にすんなって」
「先輩の気持ちにも……応えることが出来なくて……」
「いいんだ」
切なそうに彼は唇を結ぶ。
「本当にごめんなさい」
「芳樹……。兄としてでいいから、抱きしめさせてくれないか?」
「兄として……。ええ、お願いします」
先輩がゆっくり近づき僕を抱きしめる。ムスクの香りと熱を感じる。桂さんとは違った熱い抱擁だ。この陽だまりのような人を愛せたらよかったのかもしれないと一瞬思ったが、自分の命が短命である以上、やはり先輩後輩の関係でよかったと思った。
「まさか……。先生……そんなに若いのに……」
「すみません」
「なんで、謝るのよ……」
中村さんもショックを受け、タロウを撫でる手が震えている。タロウは苦手な金木犀の香りがする僕に向かってくーんくーんと悲し気に鳴いた。
それでも彼は前向きさを発揮して仕事の合間に温泉や、自然食のレストランに連れて行き、最後には神社にお参りしたりした。
「俺は……、信じないぞ。絶対治る。来月の検査できっと誤診でしたっていうさ」
「ありがとうございます」
強い先輩からの愛情を感じるが何も結局返せない。何かできることがあるだろうか。
「僕はしてもらってばっかりでしたね」
「何言ってるんだよ。そんなことないから、細かいこと気にすんなって」
「先輩の気持ちにも……応えることが出来なくて……」
「いいんだ」
切なそうに彼は唇を結ぶ。
「本当にごめんなさい」
「芳樹……。兄としてでいいから、抱きしめさせてくれないか?」
「兄として……。ええ、お願いします」
先輩がゆっくり近づき僕を抱きしめる。ムスクの香りと熱を感じる。桂さんとは違った熱い抱擁だ。この陽だまりのような人を愛せたらよかったのかもしれないと一瞬思ったが、自分の命が短命である以上、やはり先輩後輩の関係でよかったと思った。