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降りしきる黄金の雫は
第16章 16 結実
熱帯夜だ。
とても寝苦しい。それでいてなんだか寒気がする。
もう、カウントダウンが始まっているのかもしれない。

「桂さん、そろそろ僕、だめかもしれません」
「――」

「桂さんのおかげでとても幸せでした。ずっと一人が普通だと思ってたけど、あなたに出会えて――愛し合う歓びを知ることが出来ました」
「――あの男がいる」

「先輩は僕を死んだ弟さんと重ねているんです。先輩にはきっとこれから元気で明るい人と出会っていってほしいな」
「……」

「桂さんを、会社の裏庭に時期を見て植え替えてもらうようにお願いしています。あそこなら賑やかです」
「そうか」

「残念だな。秋までもたないみたい。金木犀、見たかった」
「今夜は満月だな。少し待っていろ」

すっと桂さんが部屋を出て庭の方へ向かう。
だるい身体を起こしてカーテンを引き引き戸を開けた。
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