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ご褒美はキミ
第3章 そして始まる
「ごめんね。話、分からないよね」

じっと俯いていると、高志先輩が再び顔を覗き込んできた。

「い……え……」

先輩たちと出会うまで、バスケのことは何も分からなかった。
今だって、分かっているとは言えない。

勉強してルールは理解できるようになったけれど、それが精一杯。
具体的な話や、選手一人一人のことになると、全く分からない。

それでもいつもの私なら必死になって話を聞いている。楽しそうに話す先輩たちを見ているだけで幸せになれるから、話が分からないのは関係なかった。

今、それが出来ないのは……

体に回されたままの手が動くたびに全身が粟立って、声が漏れてしまいそうで、平静を装うのに必死で、頭がいっぱいいっぱいで……

けれど、そんなこと言えるはずがない。


何か言わなくちゃ……


そう思うけれど頭が働かなかった。
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