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狼に囚われた姫君の閨房録
第18章 禁門の変

新選組が帰営したのは夜更けだった。
「お嬢さん、副長たちが戻られました」
門のところで、主計の声がした。大人数が玄関を入ってくる気配がして、私は急いで出迎えた。
「お帰りあそばしませ。つつがない勝利、おめでとう存じます」
禁門の変は丸一日で終わった。長州藩は敗北を喫し、真木和泉やら久坂玄瑞らを失うこととなった。
京の街も無傷ではなく、あちこちが丸焼けになったと聞いた。
「さすがに、ヘトヘトだぜ」
式台に、左之助は足を投げ出して座った。羽織のあちこちが綻びている。
「長州藩の奴らが粘りやがってな」
「詳しいことは後だ、後。飯はできてるか?」
草履を脱ぎながら、血と泥にまみれた新八が言うので、
「お食事の前に湯あみをなさいませ」
私は苦笑して嗜めた。
「いいじゃねえか。腹減ってるんだからよ」
「いけません。歳三兄上さまに叱られても良いのですか?」
「しょうがねえなあ。左之、付き合え」
新八は左之助と肩を組んで、足音も荒々しく浴室に向かった。廊下には点々と足跡がついている。
(後で掃除が大変だろうな)
私が肩を竦めたとき、暗がりから一が現れた。
傷一つないが、疲労の色は隠せない。羽織の袖に焼け焦げがあるし、白磁のほおにも泥が付いている。
「おつかれさまでございます。とりあえず、汗をお流しになりますか?」
「いや、いい」
一はゆるく首を振った。
「床をのべてくれ。寝みたい」
一がそんなことをいうのは珍しい。することをしなければ、寝ない人なのに。
「かしこまりました。直ちに、お支度を」
「お嬢さん、副長たちが戻られました」
門のところで、主計の声がした。大人数が玄関を入ってくる気配がして、私は急いで出迎えた。
「お帰りあそばしませ。つつがない勝利、おめでとう存じます」
禁門の変は丸一日で終わった。長州藩は敗北を喫し、真木和泉やら久坂玄瑞らを失うこととなった。
京の街も無傷ではなく、あちこちが丸焼けになったと聞いた。
「さすがに、ヘトヘトだぜ」
式台に、左之助は足を投げ出して座った。羽織のあちこちが綻びている。
「長州藩の奴らが粘りやがってな」
「詳しいことは後だ、後。飯はできてるか?」
草履を脱ぎながら、血と泥にまみれた新八が言うので、
「お食事の前に湯あみをなさいませ」
私は苦笑して嗜めた。
「いいじゃねえか。腹減ってるんだからよ」
「いけません。歳三兄上さまに叱られても良いのですか?」
「しょうがねえなあ。左之、付き合え」
新八は左之助と肩を組んで、足音も荒々しく浴室に向かった。廊下には点々と足跡がついている。
(後で掃除が大変だろうな)
私が肩を竦めたとき、暗がりから一が現れた。
傷一つないが、疲労の色は隠せない。羽織の袖に焼け焦げがあるし、白磁のほおにも泥が付いている。
「おつかれさまでございます。とりあえず、汗をお流しになりますか?」
「いや、いい」
一はゆるく首を振った。
「床をのべてくれ。寝みたい」
一がそんなことをいうのは珍しい。することをしなければ、寝ない人なのに。
「かしこまりました。直ちに、お支度を」

