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狼に囚われた姫君の閨房録
第35章 総司と左之助の死

【第三者視点】
空一面の銀河。夜の帳が下りる刑場に、近藤勇の首が月明かりにぼんやりと浮かんでいる。
見張りは洋装に銃を構えた薩摩藩士が五人だ。
木陰から様子をうかがうのは、原田左之助と永倉新八である。新八が屈んだまま、腰の刀に手をやると、
「落ち着け、新八。急いては事を仕損じるだぜ」
後ろの左之助が新八の肩に手をかける。
「わかってるって。ここでしくじったら、何のために新選組を抜けたかわからねえ」
「親父さんの遺志だ。『新選組を離隊した態にして、俺の首を盗みにこい』ってな」
左之助は喉の奥で笑った。
「ほかに適任者がいねえとはいえ、とんだ役目を仰せ付かっちまった」
新八は苦っぽく笑った。月光の中で、白い歯が鮮やかだった。
「あんちゃんは宇都宮、一は会津に向かってる。俺とおまえがやるしかねえもんな」
「もうじき、見張りの交代の刻限だ。一瞬、気が緩む。そこを狙うぞ」
「おうよ」
新八が胸を叩いた時、
「なるほどね。新選組を脱退したなんて変だと思ったけど……そういうことだったのか」
背後で、いきなり声がした。
鯉口を切る新八。刀を抜こうとするところを、刀の鞘であっさりと押さえられた。
こんな電光石火の動きができるのは、一人しかいない。
「総司か!」
空一面の銀河。夜の帳が下りる刑場に、近藤勇の首が月明かりにぼんやりと浮かんでいる。
見張りは洋装に銃を構えた薩摩藩士が五人だ。
木陰から様子をうかがうのは、原田左之助と永倉新八である。新八が屈んだまま、腰の刀に手をやると、
「落ち着け、新八。急いては事を仕損じるだぜ」
後ろの左之助が新八の肩に手をかける。
「わかってるって。ここでしくじったら、何のために新選組を抜けたかわからねえ」
「親父さんの遺志だ。『新選組を離隊した態にして、俺の首を盗みにこい』ってな」
左之助は喉の奥で笑った。
「ほかに適任者がいねえとはいえ、とんだ役目を仰せ付かっちまった」
新八は苦っぽく笑った。月光の中で、白い歯が鮮やかだった。
「あんちゃんは宇都宮、一は会津に向かってる。俺とおまえがやるしかねえもんな」
「もうじき、見張りの交代の刻限だ。一瞬、気が緩む。そこを狙うぞ」
「おうよ」
新八が胸を叩いた時、
「なるほどね。新選組を脱退したなんて変だと思ったけど……そういうことだったのか」
背後で、いきなり声がした。
鯉口を切る新八。刀を抜こうとするところを、刀の鞘であっさりと押さえられた。
こんな電光石火の動きができるのは、一人しかいない。
「総司か!」

