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狼に囚われた姫君の閨房録
第8章 座敷牢
廊下の話し声に、私は目を覚ました。薬が効いたのか、熱はすっかり下がっていた。
「……大阪力士との一件は、無礼討ちということで、片がつきました」
これは山崎烝の声? 報告をしにきたのか。
「芹沢局長が大阪奉行所に被害届を出したため、そうせざるを得なかったのが本音だと思いますが」
「あれだけ力士を叩っ斬っておいて、無礼討ちもないもんだよ」
総司が苦っぽく笑う。
「喧嘩を売ってきたのは、あやつらだからな。無礼討ちで斬られても文句は言えぬ」
一は吐息を漏らしてから、続けた。
「用はそれだけか?山崎」
「いえ、副長に姫君の様子を見てこいと。熱を出されたと聞き、心痛のご様子でした」
「心配するなら、牢に入れなきゃいいのに」
総司が笑う後から、一が言葉を継いだ。
「薬が効いて、熱は下がったようだ。熱の原因は芹沢鴨の毒によるものと考える」
「あれほどとは思わなかったよ。すみれちゃんの潜在能力、僕らより遥かに上なのにさ」
冷たすぎる総司の声に、私はゾッとした。芹沢への憤りが凄まじいのだ。
「容保公には報告済みだよね?芹沢を殺っちゃっていいって言ってた?」
「総司。滅多なことを言うな」
一が嗜めたが、それで黙る総司ではない。
「芹沢はいずれ僕たちの前に立ちはだかるよ。ほっとがない方が良くない?」
「それに関しての、容保公のお言葉をお伝えします」
山崎が間に入った。
「次に芹沢鴨が暴挙に及んだら、容赦するな。場合によっては、粛清もやむを得ぬと」
「斬ってもいいってことだね?」
はい、と山崎は低く答えた。
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