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母親失格
第1章 母親失格
 長女と次女はワンワン泣いていた。
 義弟が近付いてくる。
 義弟が私の腕から2人を奪い取るようにして片腕に1人ずつ抱き上げると、娘たちは更に大きな声で泣いた。


「夫君、」


 床の上に蹲っていた夫に駆け寄ると、夫は「…悪かった」と呟いた。
 顔を上げ、見つめた先は、義弟だった。



「こんな兄貴で悪かったな」



 義弟は返事もせず、長女と次女を抱きかかえたまま、出ていってしまった。
 廊下の奥から2人の泣き声がとりわけ大きく聴こえて…じきにドアの外に消えた。



「いい加減にしてよね」



 長男が言う。
 


「パパもママも大人なんだから、もっと、おれたちが不安にならないように考えてよ」




 タブレットに向いたままの長男の横顔は…
 涙を堪えて、震えていた。




「大人なのに、ニコニコで別れられる方法とか、そんなことも分からないの?」




 ……たぶん。
 私が泣く資格は、ひとつもないだろう。





「昔はお互いに好きだったから結婚したくせに、おれたちはおもちゃじゃないんだよ」






 立ち尽くす私の目の前を、夫が這うようにして移動して…タブレットを見つめる長男を抱き締めた。
 長男の顔がみるみるうちに表情を崩していく。





「こんなパパでごめんな」





 夫の震える声を聞いた途端。
 長男は、声を上げて泣いた。





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