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母親失格
第1章 母親失格
 週末。義弟が家に来た。
 リビングで食卓を挟んで向かい合って座り、淡々と話をする2人を、子供たちが不安そうな顔で見守っていた。



「てか子供のときお前さぁ、ミッキーのことずっと“ネズミ”って呼んでたよな」



 突然、夫がそんなことを言った。
 義弟が肩を震わせて笑いながら答える。



「なんで今そんな話するの?」

「いやお前がミッキーのトレーナー着てるから」

「あぁ、これユニクロ」

「ユニクロ、じゃねーよ。もっと他に服装あんだろ、てめぇ俺の家庭ブッ壊したんだぞ」
   



 椅子が吹っ飛ぶ。
 夫が蹴ったのだ。

 食卓越しに夫が義弟に掴みかかり、鎖骨の辺りを殴り付けた。
 肉と肉がぶつかり、骨が軋む嫌な音がする。
 私は咄嗟に長女と次女を抱き締める。

 視界の隅で、義弟が夫を殴り返したのが見えた。

 長男はうんざりした顔で、タブレットの電源をオンにした。

  

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