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母親失格
第1章 母親失格
「次兄ちゃん。わたしとうとう離婚しちゃったぁ」
日曜日の公園は、ちょっとしたテーマパーク並みに親子連れで賑わってる。
どこに引っ越しても、それは全国共通らしい。
電話の向こうで次兄ちゃんが『らしいね』と言った。
『お前のせいでこっちは大変だよ。母さんが取り乱してホント、俺の身にもなってくれよ』
「ごめんね」
芝生の上で、義弟が長女と次女とボール遊びをしている。
あの日の涙なんてなかったかのように、娘たちが笑ってる。
次兄が言った。
『なんてウソだよ。まぁ良いんじゃない?息子より男を選んだお前を、他人は認めないだろうけど。でも息子のせいにして母親ヅラして生きるより、ずっとマシだよ』
「ありがとう」
『むしろ俺はお前に感謝してるよ。
お前がずっと出来損ないでいてくれるから、俺の立場が守られるんだよ』
「あっそう」
『お前ってなんだかんだ、長兄ちゃんに1番似てるよ』
「どういうこと?」
『俺を愛してくれてるよな』
「は?」
『長兄ちゃんもお前も、俺をいい息子にしてくれる』
「…何言ってんのか意味分かんない」
長女と次女がこちらに向かって走ってくる。
短い別れの挨拶を交わして、通話を終えた。
カバンから水筒を取り出すと、ちょうど2人がそれを受け取り、喉を潤すと、また義弟のもとに駆けて行った。
「いいですねぇ、うちのダンナは公園にすら連れて行ってくれなくて」
突然話し掛けられ、隣を向くと。
ちょうど、ベンチの隣に、ヘトヘトといった様子の若い母親が、小さい子供を抱いて腰掛けたところだった。
小さい子供はマグを両手でしっかり握り締め、必死でお茶を飲んでいた。
「子煩悩なパパさんで、うらやましいです」
若い母親の視線の先に、長女と次女と遊ぶ義弟の姿があった。
私は、いえいえ、と謙遜して、そして言う。
「あの人は元々、私の主人の弟だったんですよ。
兄嫁の私を、寝取ったような男です」
若い母親がどんな表情をしたか、見なかった。
私は荷物を持って立ち上がり、3人に手を振りながら、言った。
「きっと、あなたのほうがずっと、幸せですよ」
おしまい
日曜日の公園は、ちょっとしたテーマパーク並みに親子連れで賑わってる。
どこに引っ越しても、それは全国共通らしい。
電話の向こうで次兄ちゃんが『らしいね』と言った。
『お前のせいでこっちは大変だよ。母さんが取り乱してホント、俺の身にもなってくれよ』
「ごめんね」
芝生の上で、義弟が長女と次女とボール遊びをしている。
あの日の涙なんてなかったかのように、娘たちが笑ってる。
次兄が言った。
『なんてウソだよ。まぁ良いんじゃない?息子より男を選んだお前を、他人は認めないだろうけど。でも息子のせいにして母親ヅラして生きるより、ずっとマシだよ』
「ありがとう」
『むしろ俺はお前に感謝してるよ。
お前がずっと出来損ないでいてくれるから、俺の立場が守られるんだよ』
「あっそう」
『お前ってなんだかんだ、長兄ちゃんに1番似てるよ』
「どういうこと?」
『俺を愛してくれてるよな』
「は?」
『長兄ちゃんもお前も、俺をいい息子にしてくれる』
「…何言ってんのか意味分かんない」
長女と次女がこちらに向かって走ってくる。
短い別れの挨拶を交わして、通話を終えた。
カバンから水筒を取り出すと、ちょうど2人がそれを受け取り、喉を潤すと、また義弟のもとに駆けて行った。
「いいですねぇ、うちのダンナは公園にすら連れて行ってくれなくて」
突然話し掛けられ、隣を向くと。
ちょうど、ベンチの隣に、ヘトヘトといった様子の若い母親が、小さい子供を抱いて腰掛けたところだった。
小さい子供はマグを両手でしっかり握り締め、必死でお茶を飲んでいた。
「子煩悩なパパさんで、うらやましいです」
若い母親の視線の先に、長女と次女と遊ぶ義弟の姿があった。
私は、いえいえ、と謙遜して、そして言う。
「あの人は元々、私の主人の弟だったんですよ。
兄嫁の私を、寝取ったような男です」
若い母親がどんな表情をしたか、見なかった。
私は荷物を持って立ち上がり、3人に手を振りながら、言った。
「きっと、あなたのほうがずっと、幸せですよ」
おしまい