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息子の柔道教室の先生
第1章 息子の柔道教室の先生
「…けっこういい車乗ってるンすねー」


 吉田先生は私の車の助手席に乗り込み、シートベルトを締めながら、そんなことを言いました。
 2人きりの空間だからでしょうか?
 私はいえいえ、と謙遜しました。


「これは主人の父が乗っていた車で…新車を買ったから、私が借りてるんですよ。
 私たちじゃとてもこんな車」

「長男君の同級生君ちは3000万くらいする車乗ってるッスよね、送迎のとき見掛けたっすけど、マジスゴイッス」

「あー、あそこは不動産経営されてますからね。ママは普通の人ですよ?
 吉田先生は車がお好きなんですか?」

「エッ?あッ…まぁ、ツレが詳しいから色々聞かされて知ってるだけで、自分は別にそこまでは…」



 サングラスをかけ、車を発進させた私を、吉田先生がチラチラ見ています。
 助手席に主人と息子以外の男性を乗せたのは生まれて初めてです。
 吉田先生の服の洗剤の匂いでしょうか…吉田先生は体格の割に、いい匂いがしました。



「なんだか先生、いい匂いがする」

「エッ」


 吉田先生は横顔をポッと赤らめました。
   

「イヤ…なんかオフクロが柔軟剤に凝ってるもんで…」

「先生、ご実家にお住まいなんですか?」

「ハイ、恥ずかしながら」

「なんでー?私だったら息子がいつまでもウチに居てくれたら嬉しいですけどね?」

「いやぁ…ホントなら長男君ママみたいに、とっくに結婚して所帯持ってなきゃイケナイ年っすからね…」

「いーじゃないですか。私は主人以外の男性を知らずに息子を授かって結婚しましたから、もっと遊んでおけばよかったって後悔してますよ?」  

「エッ…あっ、そッ…すか…」




 あからさまにドギマギする吉田先生を可愛く思いました。
 

 我が家に到着すると、吉田先生が言いました。



「あの、オレ、外で待ってます」



 

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