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あなたがそれを望むなら
第3章 この手を取って
「ねぇ…、佐伯さん…」
「――――っ!」





―――――バタンッ!!





情けない…。
情けないが、俺は松野さんの問いかけに何も答えられなかった。
適切な答えなんて持ってなかった。

どうしてこんな事をしたのか、自分でもわからない。
言葉に出来ない。

閉めたドアの向こう側で、きっと松野さんは泣いてる。
俺の事なんてもう嫌いになって、明日から顔すら合わせてくれないだろう。

「くっそ…」

へこむな…、俺にへこむ権利なんてない。



ドアにもたれながら、ドアの向こうにいる松野さんへの気持ちを呟いていた。
心の中でずっと呟いていた。
松野さん本人には呟けない気持ち。
決して口にしてはいけない気持ち。




「すまない」そう思う気持ちと
「誰にも渡したくない」「好き」という気持ち。





誰にも渡したくない。
すまない。
愛してる。
俺のものになって欲しい。
俺だけのものになって欲しい。



そんな自分勝手な思いが、全然冷めてくれない。






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