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幼稚園から始まって高校生になったなら。
第5章 猪俣商店
 先に到着したのは柚希だった、特に運動などしていないにもかかわらず身体能力やバランス感覚に優れていた彼女は銀杏の木にしがみつくと巧みに四肢を動かしてスルスルと上まで登って行く。

 一方でようやく根元に辿り付いた透は自身も木に飛び付くと、急いで後を追おうと昇り始めた、その時だ。

「あっ!!」

 上の方から叫び声が聞こえて来て何かが落ちてくる気配がした、先に登っていた柚希が手を滑らせてしまい、一気に落下してきたのだ。

「ひゃっ!!?」

「おわっ!?」

 それを見た透は考えるよりも早く行動した、木から降りると両足を踏ん張らせて彼女をしっかりと受け止めたのだ。

「・・・・・っ!!ごめんね、ありがと。びっくりしちゃった」

「大丈夫?本当に・・・」

「うん。ホントにごめんね、ありがとう・・・」

 それは一瞬出来事だったが子供達には触れ合った際のお互いの感覚がハッキリと体に残っていた、しかも透はこの時後ろから抱えるようにして彼女を受け止めたために脇の下から入った腕が胸や乳首に当たってしまい、それらをギュッと圧迫する。

 うなじに生えている彼女の産毛が鼻先をくすぐって、清涼感のある女の子の甘い香りが鼻腔いっぱいに充満した。

「・・・・・」

「・・・木登りはさ、危ないからやめようよ。それより神社の公園に行こうよ、この前あそこで白蛇見つけたんだぜ、俺たち!!」

「本当?行く、いっしょにいこ!!」

 まだ少し緊張した面持ちの柚希に声をかけると彼女もようやくいつもの元気な感じが出て来た。

 透の返事に二つ返事で頷くと二人で自転車へと向けて走り出すが正直、彼女の頭の中はまだ真っ白な状況だった、色々な感情や思いが一気に溢れ出して来て処理が追いついていないのだ。

 心臓も強く脈を打ち胸の鼓動も高鳴って行くが、どちらかと言えばそれは”怖かった”というよりも“ビックリした”と言った方が正しかった、そして。

 それよりもなによりも彼女を戸惑わせていたことがあった、自分の透への思いである。
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