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幼稚園から始まって高校生になったなら。
第5章 猪俣商店
 あの瞬間透は実に素早く、そして的確に行動した、自分が地面に激突するまではそんなに時間など無かったはずなのに、その僅かな間に木から飛び降りると落下してゆく自分をしっかりと抱きとめてくれたのだ。

 その時の逞しさと頼もしさと言ったらなかった、とてものこと普段の自分の後をついて来るだけの彼と同一人物であるとは思えない。

(すごい筋肉だった、透の体。めっちゃ力強かったな・・・!!)

 思い返すと再びドキドキしてしまうがさすがに小学生くらいになってくれば女の子は女の子になって来る。

 好きでも何でもない男子に胸や脇の下などを触られたりすれば、普通なら激怒するかビックリして泣き出してしまうだろう。

 だけど柚希は少しも嫌ではなかった、状況が状況だったからという事も出来るだろうがそんなことはない、柚希はその辺り実にハッキリとしている女の子だ、嫌なモノはどうしたって嫌なのだ。

 それに小さい頃からしごかれているだけあってこの頃の透は徐々に腕力や筋力、持久力が付いてきておりそれと共に代謝が活性化して来ていた、ようするに汗や体臭が匂ってしまう場合があったのだ。

 さっきもそうだった、ただでさえ初夏の気候の中ではしゃぎまわっていた二人の体はうっすらと汗ばんでおり柚希の時と同様に透のそれも少し匂ってしまっていたのだが、だけどそれに対しても柚希は拒絶を示さなかった、もちろん彼の体臭なんて昔から嗅ぎなれているからと言う事もあったがそれだけではなかった、彼女にとって透の匂いと言うモノは安心出来て、なおかつ癖になるようなそれだったのだ。

 ずっと嗅いでいたい匂いでありしかも嗅ぎ続けている内に段々とエッチな気分になってきてしまう匂いだった。

 まだ小さかったこともあって、柚希は自分の事を“変態だ”とは思わなかった、ただどうしようもないくらいに好きな匂いを好きなだけ嗅ぎまくっていたのだ。

 それが“匂いフェチ”と言う性癖でありなおかつ自身が透の匂いにだけ敏感に反応してしまう体質の持ち主であると気付いたのは、小学校も高学年に入ってからの事だった。
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