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メサイアの灯火
第9章 帰宅後に
「はあ・・・」

(蒼太、格好よかったな・・・)

 帰宅後に自室に籠もるとメリアリアは人知れず溜息を付く。

 その数は二十を超えようとしていた、何をそんなに思い悩んでいるのか、と言えばそれは幼馴染みの少年の事だ。

 山道で迷った際に自分をエスコートをしてくれた時の頼もしさと言ったら無かった、歩を踏む足音は自信に満ち溢れており少しも疲れを感じさせない。

 体も頑健で逞しく、事実途中で何度か転びそうになった所を素早く抱き留めてくれて、支えてくれたのだがその時に感じた暖かさと力強さは今でもハッキリと覚えている。

 自分だって魔法以外にも鍛錬は積んでいたものの、蒼太のそれは段違いに凄くって、ビックリしてしまった。

 それに自分と同い年なのに自分以上に自然を知っているのだなと感じて、それがまた格好良くて思わず少女をホウッとさせる。

 あの後、結局二人は遠くにまで行っていたことがバレてそれぞれの親から注意を受けたが、それよりも何よりも今の彼女を支配していたのは蒼太への思いとある種の感動だった。

 普段の彼も優しくて好きなのだがいざの際にも男らしくて頼り甲斐があり、それを思い返すと彼女はドキドキとしてしまう。

(一緒にお風呂に入った時から凄いなとは思っていたけれど・・・)

 そう思い返してメリアリアは思わず股間が疼いてくるのを感じていた、蒼太の体、蒼太の手つき、蒼太の体温、蒼太の匂い。

 それらが反芻されて来て自然とアソコに手が行ってしまうがおませさんだったメリアリアはこの時、徐々に自身の中で芽生えつつある彼への思いの正体に勘付きつつあった、まだ幼いながらにそれが恋心であるとの自覚を持ち始めていたのだ。

 一方で蒼太はと言えば彼もまたメリアリアの事が好きだった、流石に“秘密の遊び”をした仲だった事も手伝って彼女の事は“特別な人”だと言う認識があった。

 ただこの時点で蒼太はまだ、“恋”と言うモノが解っていなかった、ようするに彼女に対して抱いていた感情を説明する言葉を持たなかったのである。

 だからまだ“好き”と言ってもそれが恋人として好きなのか、人として好きなのか、と言う境界が実に曖昧なままであり、ただ“ずっとこのまま一緒にいられたら良い”と言う思いに支配されていたのだ。
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