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オレンジ色の世界で。
第2章 嵐の中、母とふたりきり。
 それからの停電。それからの母の悲鳴。
 ぼくは手探りで懐中電灯を探りあて、直ぐに母の元へと向かった。
 あの時、懐中電灯を用意した自分を褒めたくなる。
 母は寝室で「たかしくーん!たかしくーん!」と、かなりキイの高い声を繰り返し上げていた。
「母さん!大丈夫だよー。懐中電灯あるから、今から寝室行くからそこでじっとしてて!」
 ぼくがそう声を上げると母は「うん、分かったぁ、待ってるー」と聞いた事も無い様なしおらしい声で返事をしていた。
 居間から寝室まで行くのに然程時間が掛かる筈も無いのだが、暗闇の中で独りでいるのは怖いと思う。
 懐中電灯の灯りがあっても、見慣れた室内がなんだか不気味に見えてしまうくらいだから。

 寝室につき、室内を照らすと、母はベッドの上で蹲っていた。
「母さん?大丈夫?暗いのとか苦手だったんだね?」
 ぼくはそう言いながら、ベッドへと腰掛けた。母はむくりと起き上がり、ぼくの傍へ擦り寄ってくる。
「暗いのと狭いの苦手なの。言って無かったっけ?たかしくん、ちゃんと懐中電灯用意してくれてたんだね。偉いじゃんか、さすが母さんの息子だよ」
 母はそう言い、ぼくの頭を優しく撫でてくれた。
「本当に、用意しておいて助かったよ。まだ停電直らないし。こんなに長いの初めてだよね?」
「うん、そうだね、母さんもこんなの初めてだよ。ねえ、たかしくん?」
「なに?」
「ちょっとさぁ、母さん、本気で怖くなっちゃったから、今晩は二階で寝るよ。停電何時まで続くか分かんないからさ、懐中電灯の灯りがある内に二階に移動しよう?」
 それは、母にしてはいい提案だと思った。
 若干声が震えているので、本気で怖いと言うのはどうやら本音のようだ。
「あ、そうだね。そうしよう。貴重品、段ボールに詰めた?」
「うん、多分、必要なのは全部詰めれたと思う。ちょっと重いから、気を付けてね。懐中電灯は母さんが持つよ」
 貴重品段ボールは、ベッドのすぐ傍に置いてあった。
 母が照らしてくれて、ぼくは腰を下ろし段ボール箱を抱え上げる。
 思っていたよりもずしりと重い。
「結構、重いね、これ。通帳とか印鑑だけじゃないんだ?」
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