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ペリドット
第1章 台風9号が直撃する夜。
「ゴメンなさい。変な事に巻き込んでしまって。初めてご挨拶に伺った時に、優しそうに見えたから……事情を説明したら協力してくれるんじゃ無いかと思って」
 ポロポロと本音めいた言葉が溢れ落ちて来る。僕の事を誘ってみたモノの、やはりこの手のやり取りに卓越した人間では無いのだろう。
 沈黙に耐え切れずに、言葉でその穴を埋め尽くさないと、怖くて仕方無い……先程までの平静さは今は欠片も見当たらなかった。
「私、こう言うことした事無かったから、アプローチの仕方が分からなくて、今までも何回か、ケイゴさんの部屋の前までは行ったんですけど、やっぱり怖くて、結局何も出来なくて、だけど、今日は、こんな嵐なのに、それでも私の所には帰って来てくれない主人への怒りが抑えられなくて……ゴメンナサイ。やっぱりダメですよね。私みたいに、旦那さんを他所の女に取られちゃう女なんて魅力無いし、興味も無いですよね……」
 今にも泣き出してしまいそうな表情だった。彼女のしている事は、とても褒められる事では無い。
 が、他人に相方を取られると言う苦い思いは僕も経験があるので、侮蔑はしない。
 しかし、平穏に生きているだけの僕でも、こう言うイベントに遭遇してしまうんだなぁと思うと、心の深層に火が灯る感じがあった。

「要するにシズカは、僕とそう言う関係になりたいってことかな?」
「それは、その……」
「え、今更、恥ずかしがる?」
「あのう、私、主人以外に経験が無いんです。それに最近は、主人とも、その、ろくに……」
「だから、要するに、シズカは、僕とどうしたいの?」
「えーっと、あの、要するにケイゴさんと、セッ……クスがしたい……です」
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