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ペリドット
第1章 台風9号が直撃する夜。
「毎日してるって事は、今日はもうした?」
「きょ、今日はまだ……」
「じゃぁ、昨日は何を想像してオナニーしたのかな?」
「えっと……それは、あの……ケイゴさんの事を……」
 笑みが零れる。
 それは極々自然に溢れた笑みだった。
 今日は人生初の経験尽くめで、ここまで初物尽くしになると、部屋の何処かにカメラが仕掛けてあるドッキリか何かなのだろうか?という疑いまで生じてくる。
 勿論、こんな平凡な一般人をドッキリしたところで面白い映像が撮れるはずも無いのだが、いざこうして、日常から一歩外れた現実と言うやつは、いとも簡単に人間を自意識過剰にしたり、ファンタジックにしてくれるのだ。

「僕の事を想って、いつもしていた?」
 シズカはコクりと頷く。
 薄暗闇の中、彼女の影は至極淫靡に映えている。
 依然、外は風は吹き荒れていた。
 それに呼応するかのの様に、僕の心中も熱い風の様なものが吹き荒れていたし、それは恐らくシズカも同じなのだろうと言う思いも強くあった。
「じゃぁ、いつもしてる様にしてくれるかな?」
 僕は敢えて語気を強めていた。
 それでシズカは観念したのか、床に足をぶら下げたままベッドへと仰向けに横になった。
 思わず、生唾を飲んでしまう。
 偉そうに命令をしているものの、こうして他人に自慰行為を迫るなんて初めての事なのだ。
 生粋のサディストでは無い僕にしてみれば、その光景は何処かエロビデオの中の様な世界観で、悦びよりも胸が張り裂けそうな興奮が途方も無く迸りだす。
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