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ペリドット
第1章 台風9号が直撃する夜。
「ゴメン、優しくする……」
 結局、僕は意味不明な偽善的なセリフを吐くに至ったのだ。それを受けて彼女は何か呟こうとしたので、僕はそれを御する様に口付けをした。
 舌先で上唇をなぞると、口が半開きになる。
 そのまま、彼女の前歯に舌をつけた。
 美しい歯並びだなと感じた。舌触りが心地良い。
 このまま暫く美しい歯並びを堪能していても良いかと思っていたのだが、彼女の舌が寂しそうに擦り寄って来たので、柔らかく絡んであげることにした。

 彼女は瞳を閉じていた。キスする時は瞳を閉じてするものだと、母親から教えてもらったりしたのだろうか?女性雑誌の記事で読んだのかもしれないし、学校の保健体育で習って、それを頑なに守っているのだろうかと思うと、何だか笑みが溢れてしまう。
 少し、真面目過ぎる面もあるが、十分に可愛らしい女性だと思うようになっていた。
 頭も良さそうだから色々教えてあげれば、面白い女になるだろうにとも思う。
 恐らく、彼女の旦那は、そう言う風に女を育てるという行為が苦手な人なのかもしれない。
 それか、もしくは調教されたい側の人間だという可能性もある。運悪く、彼女と旦那さんはマゾフィスト同士だったのだ。そうなって来ると余程特殊なケースでもない限り、物語は進まなくなる。
 そう言う僕の悪趣味な詮索に等気が付く事も無く、彼女は従順に舌を絡ませて来ていた。
 目の前には可愛らしい小さな耳が髪の毛の隙間からはみ出している。それを目にした僕は反射的に耳を摘んでみた。

「ひゃっ……み、耳は苦手なんです」
 咄嗟に唇を離した彼女は小さな声で恥ずかしそうに呟いていた。しかし、反応が面白いので、彼女を引き寄せて逃げられない様に身体を押さえ込んで、再び耳弄りを始める……。
「きゃっ、だ、ダメです、本当に、擽ったくて……ケイゴさん、ヤメテください」
「可愛くて面白いから止めれないよ」
「そんなぁ……あん、もうホントに、擽ったい、んですよ、んんんーーーー」
 僕の身体の下で彼女は右に左に身を捩っている。本当に苦手な様で、瞳は強く閉じられ眉間には深い皺が刻まれていた。
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