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ペリドット
第1章 台風9号が直撃する夜。
「――ケイゴさん?私の事好きになってくれますか?」
 こう言う関係に、そう言う感情的なものって重要なのかな?と正直思った。
 お互い身体だけの関係の方が、いつかは破綻するであろう時に辛い思いをしないで済むだろうにと。
 しかし、思っていたよりも僕の口は達者に動いてくれて……。
「実は、初めて挨拶に来てくれた時から、可愛い人だと思ってたんだよ。何回かは今みたいな関係になれないかなって、思った時もあったしね」
「じゃぁ、これからも私と、そのう、あのう……」
「僕とシズカは、これからもっと仲良くなれると思う」
「やっぱり、優しい時のケイゴさんの方が好きです……」
 だから、こうしてプロレス技みたいな体勢でそう言う風に告げられたら、余計に苛めたくなってしまうんだ。
 しかし、意外と計算高い彼女の事だから、その純情さすらも計算の内なのかもしれないと言う思いも僅かにはあった。
 僕は成り行きに身を任せているだけだが、今の所、浮気している旦那に仕返しをしたいという彼女の思惑は上手く進んでいる。
 なので、調子に乗って苛めてみたり、恥ずかしい格好をさせたりしてはいるが、僕は要するに彼女の手の平の上と言う事になるのだろう。

「まぁ、それはそれでいいさ……」
「え?何か言いました?」
「あぁ、いや、もうセックスしたくなってきたなぁって。シズカの準備も整ってる様だしね」
「もう……ケイゴさんのバカ……」
 段々と、深く考えるのが馬鹿らしく思えてきた。
 僕は隣りの奥さんに誘われて、それに応じてるだけなのだ。彼女もいないし好きな人もいないのだから、罪悪感を背負う事も無い。
 まぁ彼女の旦那に対しては少しぐらいそれらしき想いを感じるのが普通なのだろうが、どうやら僕はこう言う秘め事に対しての罪の意識が少々希薄な様だ。
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