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ペリドット
第1章 台風9号が直撃する夜。
「そっか、じゃぁ今からちゃんとした恋愛をすればいいね」
「ケイゴさんが恋人になってくれるんですか?」
「シズカが僕の事飽きるまでは恋人でいれると思うよ」
「もう、またそうやって意地の悪い事を言うんだから……」
 僕はシズカの唇を求めた。直ぐに気が付いてくれた彼女は、息子から手を離し抱きついて口付けをしてくれる。
 初めした時よりも情のこもったキスだった。
 そして、ふと思う事があった。
 例えば、旦那と彼女の不倫が成立したとして、その時僕とシズカとの関係はどうなるのだろうかと。
 彼女の今までの発言を遡ってみると、旦那を見返す為もしくは離婚する為の不倫だと受け取れる。
 彼女がそう思った時に偶然隣人だったのが僕なだけで……要するに後付けの好意や愛情の様な感じがするのだ。

「ケイゴさん、好きです」
 彼女はキスの間隙を縫うようにそう呟く。僕はそれを屈折させて心に仕舞い込む。
 口に出して繰り返し呟く事で、自らにマインドコントロールを掛けている……ここまで来ると、そう思ってしまう僕が病的なのだろうか。
 いや、只単に戸惑っているのだ。
 突然台風と一緒にやってきたこのイベントに僕の心は掻き乱されぐちゃぐちゃになってしまった。
「ケイゴさん、優しくしてくださいね……」
 そして、再び仄暗い寝室のベッドに、白い肌の人妻が横たわる。
 この女は、危険かもしれないと言うシグナルは察知しつつも、僕は己の本能を抑える事が出来なかった。
 夜が更けるにつれ、外の嵐は猛烈な勢いになっていた。

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