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ペリドット
第2章 ふたりの少女。
「……ケイゴさん?」
「なんだい?」
「あの……私とまた逢ってくれますか?私……迷惑じゃ無いですか?」
「全然、迷惑じゃ無いし、また何回も逢いたいって思ってるけど」
「じゃぁ、また……昨日みたいに……可愛がってくれますか?」
「本当は今からでも直ぐに可愛がってあげたいんだけどね」
「本当ですか?」
「うん、本当に」
「絶対ですか?」
「完璧に絶対」
「うふふ、そうですか……じゃぁ、キスしてあげてもいいですよ?」
 今にも泣き出しそうだったのに、いつの間にやら悪戯っ子の様な笑みを浮かべていた。
 やはり彼女は経験が少ないだけで頭が良いのだ。
 恋愛の先生のつもりでいたのだが、僅か一晩で、僕は彼女に追い抜かれてしまったのかもしれない。
 その証拠に、僕は彼女の笑みと言葉に心臓を貫かれてしまって、皮肉の一つも口から出ないのだ。
 僕自身他人に誇れる程の恋愛経験が無いのだから、安いメッキはすぐに剥がれるという事か。

 そして、僕は苦し紛れにキスをした。
 後少しで、旦那が帰宅してしまうというタイムリミットは少しきつめのスパイスとなった様で、それは、今までで一番情熱的で激しいキスだった……。
「――じゃぁ、帰るよ」
「はい、また」
「あのさ、ケイタイ番号とか……」
「ごめんなさい、私ケイタイ持って無いんですよ。逢える時は、昨日みたいに伺うので、ちゃんと出て来て下さいね?」
「うん、解ったよ。じゃぁね」
「はい、さようなら――」

 彼女の笑顔は鉄製の扉の向こうに消えてしまった。
 外はまだ嵐の渦中で、廊下の奥にまで雨風が及んでいる。
 まだ、手に、腕に、胸に、唇に彼女の温もりが残っていた。
 今すぐに、鉄の扉を開けて、また抱きしめたいと思っていたりもする。
「はは、なんだこれ。結局、僕の方が虜になってるんじゃ無いか」
 思わず出た独り言は、誰の耳に届く事も無く嵐の中に消えてくれた。
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