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ペリドット
第2章 ふたりの少女。
 意味の無い舌打ちが出る。
 時計を見て、テレビのチャンネルを回して、ケイタイを見て、また時計を見る。
 それで二分も経過してないと言う現実にまた苛々して、舌打ちをする……。
「――仕方無い、喫茶店でメシでも食うか」
 情けない己を諭す様に、呟いていた。
 情報番組のお天気お姉さんは、ニコニコとお昼までには雨風が弱まると言っている。
 電車もその頃には動いているのだろう。
 然程腹が減っている訳では無いが、これ以上この部屋にいると呼吸すらも困難な状況になる様な気がしたのだ。

 一番安らげる筈の自分の部屋に、裏切られた気分になってしまった。
 西の空は少し明るくなってきていた。
 依然、馬鹿な網戸は五月蝿いままだが、雨の勢いは弱まりつつある。
 行きつけの喫茶店はマンションの目の前なので、そう風雨に晒される事もない。
 僕は全ての事に踏ん切りを付けるべく、強く息を吐き出し、カーテンを締めて足早に家を出た。
 その瞬間、意識は隣りの家へと向かうが、視線は向ける事が出来なかった。
 目に見え無い、まったりと濃密な湿気のベールを掻き分ける様に歩いて、階下へと進む。
 傘を忘れてしまったのだが、来た道を引き戻すのは億劫でならない。

 マンションから喫茶店までは数十メートルしか無いので、僅かばかりの雨露は気にする事も無いし、昼に台風一過してしまえば、からりと晴れる筈だからそもそも傘等必要無い……僕はそう己を正当化しつつ階段を下りていく。
 三階、二階、一階と下り部屋から離れる程に、気分が晴れる思いがした。
 何とも厄介な病いに掛かってしまった様だ。
 住み慣れたこの街から離れたくは無いが、その内引越しまで考えだしてしまうかもしれないな、と思っていた。
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