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ペリドット
第2章 ふたりの少女。
「うーん、別に予定は無いんだけど……」
「わぁ!ホントに!?嬉しすぎるんですけど!待ち合わせの時間とか場所はまた後で決めようねっ。じゃあ、はい、メアド教えて?」
 満面の笑みを浮かべて、リクは僕の事を見詰めている。
 悪いヤツには見え無いんだけど、多分この手の人間はメアドを聞き出すまで、あの手この手で責め立ててくるし……。
 まぁ顔は申し分無く可愛いし。あ、足も長くてスタイルもいいか。
 それに可愛い女子高生にメアド聞かれるなんて人生でこれが最後かもしれないなぁ。
 仕方無い、面倒臭い事になったらノラリクラリと躱せばいいことだし……と、漸く結論付けた僕はリクにメアドを教える事にした。
 少し早い口調で伝えたのだが、リクは気に留める様子も無く高速でボタンを押している。

「――はい、登録完了!にひひひ……ねえ、ねえ、タチバナくん?リクね、スーツ似合う男の人がすっごく好きなの。タチバナくんってすっごくスーツ似合ってるよ。背も高いし、優しいし、大体普通はリクと喋ってたらミンナねイライライラーってしちゃうのに、タチバナくんはニコニコしててくれるし、だからね、リクはタチバナくんの事が大好きなの」
 そうか、なるほど。やはりリクと会話をするとミンナ苛々してしまう訳だ。僕は少し胸を撫でおろした。
 これから少しの間面倒臭い時が増えるかもしれないが、どうせこの年代の子は熱しやすく冷めやすいのだから、僕が平凡なアラサー男だと気が付いたらすぐに飽きてしまうだろう。
 彼女が二学期を迎える頃には先程登録していたメアドがあるかどうかも疑わしいと思う。
 リクは再びピピピと高速でボタンを押していた。
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