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ペリドット
第2章 ふたりの少女。
 漸く静かになったので、僕はコーヒーを飲む事にした。
 誰か他に客がいてくれたら、ここまで集中砲火を受ける事も無いのだろうが、残念な事に客は一向に来る気配は無い。
 外は小雨になっているので、昼頃には満員になるかもしれないが……。
 カップに口を付けつつ、外を眺めているとメール着信の音が鳴り響いた。
 リクへと視線を投げると、彼女は俄かに照れつつ笑みを浮かべていた。
 ケイタイを見るまでも無く、彼女からのメールと分かる。
 こう言うやり取りは茶番に思えてならないのだが、見ないと何やら五月蝿くなりそうなので、僕はカップをテーブルに置いてケイタイをチェックする事にした。

【リクだよ!ちゃんと登録してよね!リクはタチバナくんの事大好きだからね!】
 そりゃ勿論悪い気はしないが、こう言うものは送り主がいない場所で読むから趣きがあるのであって、目の前であからさまにリアクションを求められると、気分は白々としてしまうものだ。
「あの……もしかして、返信メール待ってるのかな?」
「うんうん!待ってるの!タチバナくんはどんなメールくれるんだろうって。あ、でもリクに見られてたらメールしにくいかな?恥ずかしかったら、また後でしてくれればいいよ。ねえねえ、タチバナくんは仕事何時頃に終わるのかなぁ?」
「仕事って今日かい?」
「えーっとね、今日もだけど、大体毎日何時くらいに終わるのー?」
「何もなければ十七時半ころには終わるけど……」
「じゃぁ、家には十八時過ぎには着いちゃってる?」
「うーん、まぁ大体そうだね」
「そっか、じゃぁ今日遊びに行ってもいーい?」
「え?遊ぶのって今週の土曜日だったんじゃぁ……?」
「だってぇ……リク多分土曜日まで待てないもん。ホントは今からバイト抜け出して遊びに行きたいんだけど、タチバナくんは仕事だもんね。だから、リク今日は夜までここで待ってるから、帰って来たらメール頂戴。マンションすぐそこでしょう?」
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