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ペリドット
第2章 ふたりの少女。
『第4話:僕にもとうとうモテキというやつが』


 十一時を少し回った頃にハンバーグ定食は届けられた。
 そこでも何かしらの絡みがあるのだろうな、と思っていたが立て続けに客がやって来たので、リクはバタバタとあちらこちらで跳び跳ねており、僕に絡んでこれなくなっていた。
 彼女はハンバーグを置いて、にこりと微笑んでから別の客の方へと行ってしまう。
 これくらいの距離感だと、とても可愛く感じられるのに……色々な事が残念でならない。
 そして、僕は漸く安息の時を迎えた。のんびりと外を眺めながら、誰に気兼ねすることも無くハンバーグを口に運ぶ。

 客はどんどんと入って来ていた。
 その度にリクのキイの高い声が店内に響き渡り、僕は一瞬安息を手放してしまうのだが、暫く時が経過すると、その声も耳に馴染みだした。
 キイは高いが嫌な響きでは無いのだ。
 それに、お盆片手に料理を運ぶ姿も中々様になっているし、常連客への愛想も良い。
 所謂、看板娘というヤツか。
 こうして、眺めている分には本当に目の保養になるのに……いざ喋り出すと……。
 もう深く考えるのは止める事にした。
 シズカの事もリクの事も考え出すと必ず深みに嵌ってしまう。
 元々恋愛体質では無いので、色恋沙汰には普通の人間より体力も精神力も多く消費してしまう性分なのだ。

 ふと、気が付くと店内はいつの間にやら満員になっていた。
 そして、僕はハンバーグを綺麗に平らげている。要するに引き際が到来したと言う事だ。
 風はまだあるが雨はもう止んでいるから、電車も動き出しているだろう。
 今から出れば十二時過ぎには会社に着いてしまうが、まぁ問題は無い。
 リクは依然、店内を若い牝鹿の様に飛び跳ね回っており、マスターも鬼の形相で鍋を振るっていた。
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