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ペリドット
第2章 ふたりの少女。
 本当だったら食後のコーヒーを頂きたい所なのだが、この状況でそれを頼んでしまうのも何だか気が引けてしまう。
 勿論、リクもマスターも嫌な顔ひとつせずに、コーヒーを持って来てくれるだろうが、これもまた僕の性分なのだ。
 がらがらと椅子を膝の後ろで押し立ち上がると、リクはきょとんとした顔でこちらに近づいてきた。

「え?タチバナくんもう帰っちゃうの?いつも食後のコーヒー飲むのに」
「あぁ、うん。今日はもう帰るよ。仕事あるしね」
「そっかぁ、そだよねぇ、仕事だもんねぇ。あーあ、もっと喋りたかったのになあ」
 リクは感情表現が豊かで、その起伏の激しさについつい引込まれてしまうのだ。
 甘い顔はしないでおこうと、思ってはいたが、いざこうして泣き出してしまいそうに寂しい顔をされてしまうと、手を差し出すしか無い状況になってしまう。
「後で、ちゃんとメールするから、そんなに悲しそうな顔するなよ」
「ホントにー?ちゃんと絵文字付きで可愛いメールしてくれるの?」
「可愛いかどうかはさて置き、それなりのメールは送るよう努力はする」
「そっか!じゃぁ夜までバイト頑張れそうかも!帰って来るの待ってるからね?」
「あぁ、はいはい。じゃぁバイト頑張って。お金はここに置いておくから」

 そうこうしてる間に、料理が出来たとマスターの声が上がる。
 リクは一瞬名残を惜しんだが、直ぐにスイッチを切り替えて、再び看板娘へと戻っていった。
 店を出る前にマスターと笑顔を交わしてから、外へと踏み出した。

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