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ペリドット
第2章 ふたりの少女。
 風は強いが、雲の切れ目からは夏らしい青空が垣間見えていた。
 からりと晴れて清々しい天候になってくれれば、気分良く通勤が出来る。
 取り敢えず、駅へと向かおうと歩き出した。
 何の気無しに見上げた先には僕の住むマンションがある。
 現在の立ち位置からはベランダが見えていた。
 自然と視界には自分の部屋のベランダが入る。
 そして、お隣さんのベランダも目に映り込んできた。

 そこには、人影があった。
 そう、シズカの旦那がベランダで煙草を吸っていたのだ。
 向こうはこちらに気が付いて無いと思うが、僕の鼓動は早鐘を打つように高まっていた。
 挨拶の時会った時よりも若干顔立ちが違って見える。
 シズカから色々聞いているので、以前には無かったフィルターが発生しているのだろう。
 彼は煙草を吸いつつケイタイを弄っていた。
 例の不倫相手にでも連絡しているのだろうか?
 こう言う時、多分シズカは無心になって部屋の掃除でもしているのだろう。
 もしかしたらまた腕に縒りを掛けて料理を作っているのかもしれない。
 これでまた旦那が夜遊びに行ったら、シズカは僕に縋りに来るだろうか?僕と言う逃げ場が出来た事で、彼女はもう我慢する事を止めてしまう可能性がある。

 僕は大きくため息を吐き、頭を左右に強く振った。
 シズカの事はあまり深く考え無いと決めた所だ。
 これ以上一人でぐるぐる考えていても仕方無いという結論はもう何回も出ているのだから。
 旦那の視界に入らない道の端を歩いて駅へと向かうことにした。
 彼は僕の事等気にしないだろうが、何となく彼の視界には入りたくないと思ったのだ。
 それから、駅に着くまでにリクへとメールを一通飛ばしてみた。

 可愛いメールとリクエストがあったが、絵文字無しでバイト頑張れとだけ送ったら、五分後くらいに――。
【ちょっとぉ!ありえないんですけど!可愛いメール送るって言ったクセにぃ!もうタチバナくんのバカバカバカ!好きだけどキライだよ!】
 と、そのまま声が聞こえてきそうな怒り?メールが返ってきた。
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