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ペリドット
第2章 ふたりの少女。
『第5話:ここは今、正に世界の中心』


「え?今日今からですか……?あ、はい特に予定は……無いですけど」
 その日、仕事は無事終える事が出来たのだが、帰り間際急に部署内で飲みに行こうと話が盛り上がり出して、そそくさと帰ろうとしている所を先輩に首根っこを掴まれてしまっていた。
 男が多い部署なので、恐らくだがビアガーデンからのキャバクラもしくは風俗みたいな流れになるのだろう。
 こう言う時、大体僕は一次会で抜け出すことにしてるのだけれど、一番五月蠅い先輩が「おい、橘!オマエ前回確か途中で逃げたよな?今日は最後まで付き合えよ?」と周囲全員に聞こえる様な大声でそう言い放ってきた。
 今まで抜け出し逃げ出して来た結果がこの有様。笑うに笑えない。
 しかも、今日は何だか参加人数が多い。勢いづいて朝までコースになられると、短い休暇が更に短くなってしまう。

 何とか逃げ出す算段を考えていると「おい、俺の隣り座れよ!オマエ実は結構飲めるヤツだって聞いたぜ?」と更なる追い打ち。
 これもモテキのなせる業なのだろうか?普段は会話も碌にしない先輩から次々と声を掛けられてしまう。
 要するに、今日の僕にはもう逃げ場が無い。これはもう行くとこまで行くしか無い状況の様だ。
 取り敢えず、リクには正直にメールをしておく事にした。

【ゴメン!先輩達と飲みに行く事になったから今日は遊べない】
 そのまま文章だけで送信しようとしたが、思い止まり語尾にゴメンネマークを添えてみる。
 これくらいの事で機嫌が良くなるとは思わなかったが、昼あれからメールを返して無かったので、流石に可哀想に思えたのだ。
 リクからは直ぐに返信があった。

【えええええー、超ショックなんですけどー!リクさぁ、一回家に帰って服着替えて来たんだよ?お腹減ったけど、タチバナくんと一緒にゴハン食べようって思ってお昼も抜いて待ってたのにぃ!】
 リクはバカっぽいけどイイヤツなだけに胸が痛む。
 しかし、こればかりは仕方がない。完全に不可抗力なのだから。
 ここでぶっちぎって帰ってしまったら盆休暇後恐らくありとあらゆるハラスメントを先輩方々より受ける羽目になる。
 だが、昼飯を抜いてまで楽しみにしてくれたリクには流石に申し訳無い気持ちで一杯になってしまった。
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