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ペリドット
第2章 ふたりの少女。
  僕は今、先輩達に囲まれて街を歩いている。そんなことしなくても逃げないのに……悲しいが信用されてないと言う証だろう。
 行き先は聞いて無いが、歩いて行くと言う事は会社から一番近いビアガーデンに行くのだと思う。
 取り敢えず今はリクへのメールに専念したかったのだが、まだ酔って無い筈の先輩方に無駄に絡まれて上手く文章が浮かばない。
 適当に送っても機嫌が悪くなるだけだろうからと思い、今はメールを控える事にした。
  こうして僕をツマミに盛り上がろうとしてるが、僕みたいな凡人を中心にして宴会が何時までも盛り上がる筈が無いのだ。
 一時間もすれば先輩方も飽きて、放置される時間が来るだろう。リクへのメールはそれからでも遅くは無い。
 後は、出来るだけ空気の様に、周りのその他大勢達の中に徐々に紛れて行けばいい。

「――なぁ、おい?今日さ、鈴木係長も来てるんだってよ」
「マジかよ?オマエ声掛けてみろよ!鈴木係長のこと、結構タイプだって言ってたじゃん」
「いやぁ、けどあのヒト超厳しいじゃん?会議とかでもさ、歳上とか上司とか関係なく噛み付いちゃうんだろ?しかもさ、アレ、専務と色々噂もあるし……」
 雑踏の中に噂話が紛れて耳に流れてくる。
 早くも、もう既に話題は僕から離れている様な気がしていた。鈴木係長と言えば、女性ながらも我社で一番の出世頭として名を馳せる人だ。
 隣りの部署だから面識が無くは無いが、通りすがりに挨拶をするくらいなので、僕には無縁の人だと言えるだろう。
 美人で仕事が出来て、しかも話題性の高いゴシップネタも持っている。そんなビッグネームが来るのだから、要するに僕はもうお役御免な訳で、先輩方もいつの間にやら、鈴木係長の容姿や噂話で持ちきりになっていた。
 流れ的には実に都合が良い。このままだと、乾杯して十分もすれば抜け出せる可能性が高い。
 そうすれば、それから連絡を取ってリクと遊ぶ事も出来る。
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