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ペリドット
第1章 台風9号が直撃する夜。
『第2話:もう彼女イナイ歴二年です』
黒いシャツにアディダスのジャージそしてビーサン。ラフな格好で、僕はお隣さんちの扉の前に立っていた。
右手にケイタイを握り締めて表札を見上げる。
表札には比較的達筆な時で持田と書いてあった。それを見て漸く僕はお隣さんの苗字を知ったのだ。
多分、挨拶に来た時に聞いたのだが、それ以来付き合いの無い隣人の名前なんて誰しもが直ぐに忘れてしまうだろう。
ピンポーンと少し長めに呼び鈴を鳴らすと、奥さんは直ぐに扉を開けてくれた。先程は白いショールを纏っていたので気が付かなかったが、彼女は薄い水色のノースリーブのワンピースと言う格好だった。
生まれて此の方一度も日焼けしてません、とでも言い出しそうな白い二の腕が眩しく映る。
「うふふ、良かった。畏まった格好で来られたらどうしようって思ってたんですよ」
「あはは、一瞬迷ったんですけど、気を遣わせると悪いと思って、いつもの部屋着で来てみました」
僕を迎え入れると、奥さんは扉を閉じて、ガチャりと鍵を掛けてしまった。その音が頭の中で韻々と印象的に響き渡る。
玄関に備え付けられた木製の下駄箱の上はシンプルに芳香剤が一つ置いてあるだけだった。
「雨も風も、どんどん強くなってきますね。橘さんはいつからお盆休みなんですか?」
「え?あぁ、明後日からです。大人の夏休みなんて週末に毛が生えた様なモノなんで、たいして楽しみでも無いですが……」
鍵を掛けた奥さんは、音も無く廊下を進み奥へと案内してくれた。同じ構造の部屋なのだが、同じマンションの他人の部屋に入るのは初めての経験だったので、何だか新鮮な気持ちだった。
黒いシャツにアディダスのジャージそしてビーサン。ラフな格好で、僕はお隣さんちの扉の前に立っていた。
右手にケイタイを握り締めて表札を見上げる。
表札には比較的達筆な時で持田と書いてあった。それを見て漸く僕はお隣さんの苗字を知ったのだ。
多分、挨拶に来た時に聞いたのだが、それ以来付き合いの無い隣人の名前なんて誰しもが直ぐに忘れてしまうだろう。
ピンポーンと少し長めに呼び鈴を鳴らすと、奥さんは直ぐに扉を開けてくれた。先程は白いショールを纏っていたので気が付かなかったが、彼女は薄い水色のノースリーブのワンピースと言う格好だった。
生まれて此の方一度も日焼けしてません、とでも言い出しそうな白い二の腕が眩しく映る。
「うふふ、良かった。畏まった格好で来られたらどうしようって思ってたんですよ」
「あはは、一瞬迷ったんですけど、気を遣わせると悪いと思って、いつもの部屋着で来てみました」
僕を迎え入れると、奥さんは扉を閉じて、ガチャりと鍵を掛けてしまった。その音が頭の中で韻々と印象的に響き渡る。
玄関に備え付けられた木製の下駄箱の上はシンプルに芳香剤が一つ置いてあるだけだった。
「雨も風も、どんどん強くなってきますね。橘さんはいつからお盆休みなんですか?」
「え?あぁ、明後日からです。大人の夏休みなんて週末に毛が生えた様なモノなんで、たいして楽しみでも無いですが……」
鍵を掛けた奥さんは、音も無く廊下を進み奥へと案内してくれた。同じ構造の部屋なのだが、同じマンションの他人の部屋に入るのは初めての経験だったので、何だか新鮮な気持ちだった。