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ペリドット
第2章 ふたりの少女。
「――橘は、ビールでいいの?」
 それは鈴木係長の声だった。
 少しハスキーでいかにも気が強そうな語気だ。
 雑踏溢れるこの空間に、彼女の声は韻々と耳に流れ込んで来る。
 そして、何よりも、彼女が僕の名を知っていてくれると言う事実が驚きだった。
「あ、はい。ビールが好きです!」
「あはは、別に好きかどうかは聞いて無いんだけど?」
「あ、そうですよね、スミマセン……」
「アンタ、幾つだっけ?」
「え?あ、二十九です」
「ふーん、そっか、二十九なんだ……」

 僕は、漸くこの時周りの空気が読めた。
 先輩方はイレギュラーな来客である鈴木係長を、僕にぶつけて様子を見ようと言う腹なのだ。
 僕と鈴木係長を見事に上座に追いやり、自分達は自分達で盛り上がって隙あらばお近づきになろう、と言う魂胆なのだろう。
「あの、鈴木係長は、お幾つなんですか?」
「え?アタシ?幾つに見える?」
 あぁ、しまった墓穴を掘ってしまった。何でよりによって年齢なんて尋ねてしまったのだろうか僕は。
 面倒な会話は避けようと思っていたのに、自ら一番面倒な会話へと突き進んでしまうなんて。
「あの、えーっと、僕と同じくらいかなぁ、とかって思ってたんですけど。あはは、ははは……」
「今ね三十一だよ。もうすぐ二になるけど」
「えーっと、じゃぁ僕より三つ上なんですね」
「アンタ、歳上は苦手そうだね。結婚は、してなさそう。彼女はいるの?」
「ちゃんとした彼女は二年くらいいないですね」
「はあ?じゃぁちゃんとして無い女はいるって事?」
「うーん、いるって言うか、いや、彼女とは全然言えないと思うんですけど。最近変化球が多くて。自分でも良く解らないんですよね」
 失敗したと思っていたが、こんな平凡な僕の話にカリスマ係長は嫌な顔一つせずに付き合ってくれていた。
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