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ペリドット
第2章 ふたりの少女。
 改めて対面してみて、彼女の存在感の強さに圧倒されそうになってしまう。
 切れ長の瞳と凛と整った眉毛が清潔感を醸し出しつつ、時折栗色の髪を無造作に掻き上げる仕草が大人の色香も漂わせていた。
 上品な鼻筋と瑞々しい唇の間から垣間見える白い歯には、思わず視線を奪われてしまう。
 僕は今更ながらに緊張してしまっていた。この人は僕に無いものを全て持っている、そんな気がするのだ。

「変化球が多い?要するにモテモテで困ってるって事かしら?」
「いや、モテモテと言う訳では無いですけど。変にタイミングが合ったと言うか」 
「ふぅん。橘はさ、一見遊んでる様には見え無いけど、ヤル事はヤってんのね。飄々としてあんまり物怖じもしないみたいだし、仕事ももう少し頑張ればいいのに。あ、ビールやっときたね」
 光輝く表情で口許には女神の如き笑みを湛えて、鈴木係長は僕の様な雑兵に親身に話し掛けてきてくれていた。
 僕は回って来たビールを鈴木係長へと手渡した。常人であれば、取り敢えず乾杯の音頭を待つのだが。
 我が部署の課長が上機嫌で乾杯の挨拶の為に立ち上がっているのに、僕の目の前に鎮座するカリスマは悪びれる事無く、既にビールを飲み始めていた。

「あのさ、橘?枝豆と焼き鳥盛り合わせとタコワサ頼んで」
「あの、まだ課長の挨拶終わってませんよ?」
「あ、あとホッケも頼んどいて」
「あの、鈴木係長?」
「ん?何?」
「いえ、頼んできます……」
 流石に、大声を張り上げて店員を呼び寄せる事は出来ないので、こそこそと席を離れて注文をする事にした。
 僕が席に戻った頃に丁度課長の挨拶が終わり、漸く宴が始まった。
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