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ペリドット
第1章 台風9号が直撃する夜。
「すごい、ですね、風」
「この辺って高層ビルも無いし、風がモロに当たるんですよね。台風の時期はいつもこうですよ」
「あの、話は変わりますけど、橘さんってお付き合いされてる方いらっしゃるんですか?」
「え?いや、その……もう彼女イナイ歴二年です。あの……あれですよね、独身でなんでここみたいなファミリー向けの賃貸マンションに住んでるんだ?みたいな……」
思わず苦笑いが浮かぶ。親にも会社の同僚にも古くからの友人にもいつも突っ込まれるのだ。奥さん的には軽いネタ振りだったかもしれないが、この手の話題をし尽くして来た僕は、自動的に自分の過去を正確に語りだすスイッチが押されてしまう。
「その……大学の時から彼女と同棲してたんですよね、結婚を前提に。その子と付き合うまでは、女関係にだらし無かったんですけど、僕なりに運命の出逢いってやつをしてしまって、それで色んな夢を抱いて、このマンションに引っ越して来て、そして、気が付いた時には僕は独りになってしまっていた……あはは、それ以来、女性恐怖症とまでは言わないですけど、深く付き合う事を避けてるって言うか……たまに呼ばれる飲み会でも盛り上げ役に徹するみたいな感じで……」
僕は残っていたビールを一気に飲み干した。今までも何回も繰り返して来た話なので、特に心傷は負わないのだが、奥さんはあからさまに可哀想な生き物を見る様な目になってしまっている。
「ゴメンなさい、そんなに深い事情があるなんて思って無くて……あの、まだビール飲みますか?」
「あ、はい!まだ、飲みたいです」
そして、僕はまたアルコールの力に縋る事にした……。
「この辺って高層ビルも無いし、風がモロに当たるんですよね。台風の時期はいつもこうですよ」
「あの、話は変わりますけど、橘さんってお付き合いされてる方いらっしゃるんですか?」
「え?いや、その……もう彼女イナイ歴二年です。あの……あれですよね、独身でなんでここみたいなファミリー向けの賃貸マンションに住んでるんだ?みたいな……」
思わず苦笑いが浮かぶ。親にも会社の同僚にも古くからの友人にもいつも突っ込まれるのだ。奥さん的には軽いネタ振りだったかもしれないが、この手の話題をし尽くして来た僕は、自動的に自分の過去を正確に語りだすスイッチが押されてしまう。
「その……大学の時から彼女と同棲してたんですよね、結婚を前提に。その子と付き合うまでは、女関係にだらし無かったんですけど、僕なりに運命の出逢いってやつをしてしまって、それで色んな夢を抱いて、このマンションに引っ越して来て、そして、気が付いた時には僕は独りになってしまっていた……あはは、それ以来、女性恐怖症とまでは言わないですけど、深く付き合う事を避けてるって言うか……たまに呼ばれる飲み会でも盛り上げ役に徹するみたいな感じで……」
僕は残っていたビールを一気に飲み干した。今までも何回も繰り返して来た話なので、特に心傷は負わないのだが、奥さんはあからさまに可哀想な生き物を見る様な目になってしまっている。
「ゴメンなさい、そんなに深い事情があるなんて思って無くて……あの、まだビール飲みますか?」
「あ、はい!まだ、飲みたいです」
そして、僕はまたアルコールの力に縋る事にした……。