パソコンから！ケータイから！スマホから！無料でどこでも気軽に楽しめる官能小説サイト

第1章 台風９号が直撃する夜。

『第３話：恋人になりませんか？』


　二本目の中瓶に入り、奥さんも少しビールが進みだした。
　そして、こう言う空気感に慣れている僕は、さらりと話題を変えてしまう。
　折角の美人さんとの食事なのだ、暗い話題は短ければ短い程良いのだから。
「あの、奥さんの名前、聞いてもいいですか？」
「名前ですか？静かな夏で、シズカです。橘さんは……？」
「ケイゴっていいます。あの、土を二つのケイと漢数字の五と口でケイゴ。これからは名前で呼び合いませんか？奥さんと橘さんじゃぁ、ちょっとお堅い感じがするんで」
「じゃぁ、ケイゴさん？」
「そうそう、じゃぁ……シズカちゃん？」
「えーっと、あの……シズカちゃんだと、ドラえもんのシズカちゃんみたいな感じがするから、その……」
「あはは、じゃぁシズカさんで」
　
　彼女の笑みはとても涼しげで素敵だ。酒のお陰か当初あった堅さも少し抜け始めて来ている。彼女もそれなりにアルコールに縋っているのだろう。
「ケイゴさんは、お幾つなんですか？多分、私と同じくらいかなぁって、初めて会った時から思ってたんですけど」
「昭和五十五年生まれですよ」
「え、ていうことは、私よりふたつ上ですね。二十九ですか？」
「ということはシズカさんは二十七？」
「あ、えーっと、まだ二十六なんですよ。もうすぐ二十七ですけど。八月生まれなんで」
　本来なら、こうして家にお呼ばれする前に交わされるであろう普通の会話して、僕達は漸く距離が縮まり出していた。
　平然としてる様に見えたが、恐らく彼女は勇気を振り絞って僕をを食事に誘ったのだろう。
　依然と若干硬さのある涼しげな笑みなのだが、何処かしら柔らかさも感じられる様になった。引っ越して来て間も無いので、只単に友達が欲しいだけなのかもしれない。
　几帳面に掃除が出来て、料理はプロ級。けど、多分人付き合いは苦手……。そんな感じで、僕は頭の中で彼女のプロフィールを作成していた。