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僕の彼女が堕ちるとき
第1章 ゼミ旅行の夜
後期試験を年明けに控えた僕らのゼミ旅行は、行きのバスの中から盛り上がっていた。
僕らは経済学部の4年生で、まだ単位が足りていない不幸なやつを除けば、後は卒論を出すだけ、というお気楽な状態だった。
実際、ゼミ旅行は2日を予定していたが、今日は宿舎での宴会まで含めての無礼講だ。
明日の午前中に、それぞれの卒論の概要報告をゼミのメンバーと先生の前でやる、という段取りになっていた。
もっとも、卒論なんかは大学院に行くやつが、優秀論文を目指してシャカリキになっているだけで、僕たちのような就職組は卒業させてもらえれば、何でもよかった。
それよりも、ゼミの友人たちとまとまって話せるのは恐らくこれが最後の機会だろう。僕たちは一抹の寂しさを振り払うように、まだバスの中だというのに、缶ビールを開けて思い出話に花を咲かせていた。
「それでは立花颯太さん、西野朱里さん、ご両人のー、婚約の前祝いといたしましてー、乾杯ー!」
「ウェーイ!」
やにわに前の席から僕の名前を呼ぶ声が聞こえ、唱和とともに缶ビールが重ねられた。
いきなりの冷やかしに面食らったが、僕の隣に座っている朱里は僕以上に顔を赤くして俯いている。
「お前ら、結婚式には呼べよな! ご祝儀は出さないけどな!」
いい感じで出来上がっている後ろの席のやつが、僕と朱里の頭越しに声をかけてきて、バスの中が笑いに包まれた。
僕らを乗せた騒がしいバスが宿舎の箱根のセミナーハウスに到着し、僕らは仲間とともに温泉に入ったり、近場を散策したりと、それぞれの時間を過ごしていた。
僕と朱里はバスの中でいささか冷やかされすぎて、僕はともかく、朱里はあまり機嫌が良くないようだった。
僕からわざわざ朱里に合いに行ったりすれば、さらに朱里が冷やかされることは必定で、僕はこのゼミ旅行中は、あまり朱里と二人にならないでおこうと決めた。