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こいのうた。
第20章 六花
京丞の家でバイトを始めて数日。
一華もだいぶ仕事に慣れ、メニューを覚えるほどになった。

そんな彼女の成長に、京丞の父親も惚れ込んでいた。

「一華ちゃん、うちに嫁に来てくれよ」

「ええっ!」

「嫌じゃなきゃ、お願いしたいよ」

昼の忙しい時間帯が過ぎ、アイドリングタイムになると、決まって苦いコーヒーを飲む社長。

どこか遠い目をして、熱いコーヒーを啜るその姿は、京丞とそっくりだった。


一華は、真剣に京丞とのこれからを考えたことがなかった。
このまま付き合っていけば、自然とこの店で働くことになる。
社長の人柄も一華は好きだったし、スタッフも皆良い人ばかりで、仕事のやりやすさはいままでに無いくらいのものだった。

でも京丞は長男。
いずれこの店を継ぐことになる。
その時、自分はやっていけるだろうかと、一瞬悩んでしまう。

「ごめんごめん。まだ早かったな」

頭を抱えこんで悩む様子を見て、慌てて社長が一華の肩をポンポンと叩く。

「まだ1年だもんな」

「俺は、すぐでもいい」

和やかな空気が一瞬 ピシッと締まる。

「一華ちゃんが16になって、俺が18になれば問題ないだろ?」

「まぁそうだけどさ…」

「一華ちゃんは、どうしたい?」


急に話を振られて戸惑う一華。

「え…っと…私は、先輩と一緒にいたいけど…」

「…けど?」

「お店を継ぐんでしょ?…私にその奥さんがつとまるかどうか…」


そんな一華の真面目な答えに、社長と京丞はプッとふきだす。

「そんな心配してたの? 大丈夫だよ、親父はまだまだずっと働くから」

「一華ちゃん面白いなぁ」

二人に笑われ、顔から火が出そうなほど真っ赤になる。


三人で笑い合いながら、こんな時間がずっと続くことを願った一華だった。
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