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スカーレット オーク
第3章 3 岐路
 緋紗がさきにドアを開けて階段を降りようとした。
 ずるっ。
 階段から足を踏み外しそうになった瞬間、男が緋紗の腰に手を回す。
「あ、ありがとうございます」
 すごくひやっとした後に目の前に男の顔があって更にドキリとした。

「大丈夫?」
「ええ。いつもペタンコの靴なのでちょっとミスっちゃいました」
 言い訳が一層羞恥心を呼び起こす。
体勢を直して降りようとすると男が先に一段降り、
「どうぞ」
 と、手を差し伸べる。

「あ、あの」
 こんなリードのされ方は初めてでまた恥ずかしくなったが折角なので手を引いてもらうことにした。
「すみません」
 ――子供の階段を手伝ってるみたい。
 自嘲気味に状況を考察した。

ラストの段になった時、
「もう平気です」
 と緋紗は手をひっこめる。
「よかった」
 男も安堵したようだ。

「岡山駅方面ですか?」
「うん。ほとんど目の前のホテルです。方向一緒ですよね」
「はい」

 なんとなく歩き出して緋紗はさっき抱えられた腰が熱くなってくるのを感じた。
――もう一度この人の匂いが嗅ぎたい。
そう思った瞬間、身体の中から燻ってくるものを感じる。
理性が(早く帰ろう。帰って熱いシャワーでも浴びよう)と囁いた。
駅前の大きな交差点につく。――ここでお別れ。
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