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スカーレット オーク
第43章 43 成型
 休憩時間になり松尾の妻の美紀子がコーヒーを運んできた。

「緋紗ちゃん休憩しましょう。おとーさーん休憩しましょー」
「おう」

 固まった肩を回しながら松尾がロクロ台から降りてきた。

「先生。今度の窯焚き、知り合いが見たいらしいんですけど。最後のほう。来てもいいですか?」
「ええよ。どんな人なら?」

 ――どんな人か……。
 うまく説明ができないのでとりあえず直樹の職業を話してみた。

「えっと。林業やってる人です」
「林業って言うと男か」
「緋紗ちゃんの彼氏?」

 ――突っ込まれると思った。
「いえ。そういうのではないんですけど」

 しどろもどろだが、「この前の工芸展で備前焼のことを色々説明してあげたら興味を持ったらしいです」と、説明した。

「ふーん。ええよ。今度はおめえと鈴木と谷口で焚いてもらうけぇ。最後までおれるんならおめえと組んで横焚きすりゃええ」
「打ち上げもどうぞって言ってあげて」
「え。いいんですか。ありがとうございます」

 備前焼きは他の窯業地と比べて比較的オープンだ。
釉薬ものをつくる陶芸家には釉薬そのものにも窯の温度の上げ方や冷まし方などにも企業秘密があるらしく、容易に仕事場を訪れることができにくい。
こうやって初めての人が参加できる大らかさは備前焼の魅力の一つだ。――直樹さんと窯が焚けるのか。
 いつも待ち遠しい窯焚きがますます楽しみになった。
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