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スカーレット オーク
第48章 48 窯焚き
 直樹は岡山駅から赤穂線に乗り換えて伊部駅に向かった。
岡山市から遠ざかるにつれ山や畑ばかりが窓から見えてくる。――どんどん田舎にいくな。
 窓の外の田舎風景を見ていると、ぽつぽつとレンガ造りの煙突が見え始めた。
地元の工場とは違って趣のあるもので、伊部駅に着くころにはもう何本も煙突を見ていた。――これだけ陶芸家がいるってことか。
 感心していると伊部駅に着いた。
時間は五時過ぎでまだ明るかったが、駅にある喫茶店はすでに店じまいし二階のギャラリーも締まっているようだった。――終わるの早いな。

 小さな駅前の広場にタクシー乗り場があり、客待ちをしていた暇そうな運転手に合図をした。

「ビジネスホテルまでお願いします」
「どうぞ。伊部の?」
「ええ。そこから松尾さんって作家さんの工房は近いですか?」
「ホテルの手前だよ。そこによる?」
「いえ。ホテルでいいです」

 三分も走るとホテルに着いた。
駅前もそうだったが人通りは少なく車もあまり通らない。
ホテルの道を挟んで大きな池があり、その池の真ん中に新幹線の高架橋が通っている。
不思議なところへ来た感覚でチェックインを済まし、受付に今夜の予定を告げて遅くなるかもしれないと言い、部屋のキーを受け取った。
今はまだシーズンではないらしく部屋は空いていて、特に予約もしていなかったが広いシングルルームをとることができた。
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