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スカーレット オーク
第53章 53 静岡へ再び
 直樹は前と同じように一般乗降場で緋紗を待った。
車はSUV車だが前回の軽トラックよりずいぶん乗り心地が良いだろう。――そろそろ来るかな。
緋紗が向こうから歩いてきたが直樹が見えたようで少し大きめの荷物を持ち小走りになった。

「こんにちは。素敵な車ですね」

 息を弾ませる緋紗はグリーンの大きなチェックのシャツワンピースを着、涼しげで清楚だった。

「疲れた?乗って」

 緋紗は直樹が言うまま乗りおとなしく座っている。

「会いたかったです」
「僕も」

 少し車を走らせてコンビニの前で止まった。
一緒に店に入りコンドームを買おうとする直樹の手を緋紗は引っ張りそっと、「あの。それ。いらないです」と、恥ずかしそうに耳打ちする。

「そうなの?」

 直樹は気を利かせて買ってきたのかと思ったが言わずに買うのをやめた。

「何か欲しいものある?」

 特に何もないらしく手ぶらで出てまた車に乗った。

「本当にいらなかったの?」

 尋ねると緋紗は恥ずかしそうな様子で言う。

「私、いまピルを飲み始めたんです」
 ――避妊の薬だっけ?
その知識に乏しいので直樹は緋紗の身体を心配した。

「大丈夫なの?」
「大丈夫です。というか色々体調とか整うし便利なんですよ。コンドームより避妊率高いし」

 緋紗は春に抱かなかったことの理由を避妊のためだと思っているようだ。
だからきっと自分でピルを処方してもらったのだろう。
ピルについて一生懸命説明している緋紗がいじらしかったがついつい、「じゃあ好きな時にいつでも抱いていいの?」と、言ってしまった。
緋紗は真っ赤になって、「いいです」と、小さな声で答えた。
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