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スカーレット オーク
第60章 60 木々
 少し日も落ちて夕暮れに差し掛かってきた。
ペンションに入って緋紗は売店のスギのエッセンシャルオイルを手に取ると、小夜子が、

「いらっしゃい。あら。今日は一段と素敵ね」と、目ざとくルビーのペンダントに目を止めた。
「ありがとうございます」

 恥ずかし気な緋紗に小夜子はニヤリとして直樹をちらりと見るが素知らぬ顔だ。
緋紗が、「これください」 と、オイルを差し出すと、「僕が払うよ」「あら。プレゼントするわよ。緋紗ちゃん」と、直樹と小夜子が張り合うように口々に言う。

「いえ。ちゃんと買います。この前いただいたバイト代もまだありますし」

 小夜子はびっくりして、
「え。いつの話?もう半年以上前よ。ストイックねえ」
 と、大げさに肩をすくめた。

緋紗は赤面して紙袋に入れてもらったオイルを受け取った。
緋紗は小夜子さんと違いますからね」

「今は地味ですー。いー」

小夜子は子供っぽい顔つきを見せる。

 緋紗は二人のやり取りが面白くてついつい笑ってしまった。
緋紗にとっては年上の男性である直樹だが、兄がいるようだし、和夫と小夜子との関わり方を見ていると案外『弟キャラ』なのかもしれない。
いろんな直樹の姿が見られるのは嬉しいことだった。

「お皿みた?すごくいい感じだわよね。使い勝手もすごく良さそうだし」
「あんなに可愛らしくなって私も嬉しいです」
「緋紗ちゃんは、ほんといい娘よねえ」

小夜子が緋紗の頭を撫でると、直樹は、「勝手に触らないでください」と、緋紗を引き寄せた。

「やーねー。緋紗ちゃん、よく考えた方がいいわよ?直君みたいな暴君相手にしてると大変だわよ」
「和夫さんも大変ですよね」
「まあっ!」

 喧嘩友達のようなやり取りだ。
本当に仲が悪いわけではないが、好戦的な二人はお互いを相手にするとエキサイトするらしい。
最初は見ていてハラハラしたが、今ではこれが二人の挨拶のなのだとわかったので安心してみていた。

「じゃ。そろそろディナーにどうぞ」
「行こうか」

 直樹が緋紗の手をとってエスコートした。
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