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スカーレット オーク
第72章 72 動かせないベッド
車が止まり夏に来た直樹の家に着いたが、前の古屋はなく真新しい木造で三角屋根の家がこじんまりと建っていた。
緋紗は家を見上げる。――かわいい家。
まるで『大草原の小さな家』にでも出てきそうな素朴だが暖かそうな家だ。
「こっちだよ」
直樹が玄関のドアを開ける。
「失礼します」
新しい木の香りがする。
見回すと高い天井で広々としたリビングルームに暖炉があった。
緋紗はどこかに迷い込んだ動物のように四方八方に目をやる。
「他の場所はまたあとで見せてあげるからとりあえずこっちに来てくれるかな」
ぼんやりしている緋紗を直樹は誘導する。
無垢の木の扉を開けると六畳ほどの部屋にキングサイズのベッドがどんと置かれていた。
「すごい。大きいベッド」
驚かされっぱなしで頭の整理が全くつかない緋紗を、直樹は抱きかかえゆっくりベッドに降ろす。
緋紗の横に座って、「突然でごめん」と、謝って説明を始めた。
今でも林業の仕事を続けていること、家は森林組合から木材を購入し和夫がペンション『セレナーデ』を建てたとき同様、ハーフビルドで自分も建築に関わったこと。
「よかった。直樹さんが森から離れていなくて」
「前の仕事に戻っていたら緋紗は僕を見向きもしてくれないだろ」
直樹は笑った。
緋紗も安堵の表情を浮かべる。
少し落ち着き、ベッドの滑らかな宮棚を撫でた。
「このベッドすごいですね。剥き出しの木がすべすべして光っててとても素敵」
「スカーレットオークなんだ。さすがにオデッセイウスのようにはいかなかったけど、動かせないベッドだよ。僕が作ったんだ」
「えっ」
「この木だけ輸入なんだけど、どうしてもこの木を使いたくてね。育ててると二、三十年かかってしまうし。そこまで待ってもらえないだろ」
直樹は檻ではなく自由に出入りできる寝床を作っていた。
緋紗は家を見上げる。――かわいい家。
まるで『大草原の小さな家』にでも出てきそうな素朴だが暖かそうな家だ。
「こっちだよ」
直樹が玄関のドアを開ける。
「失礼します」
新しい木の香りがする。
見回すと高い天井で広々としたリビングルームに暖炉があった。
緋紗はどこかに迷い込んだ動物のように四方八方に目をやる。
「他の場所はまたあとで見せてあげるからとりあえずこっちに来てくれるかな」
ぼんやりしている緋紗を直樹は誘導する。
無垢の木の扉を開けると六畳ほどの部屋にキングサイズのベッドがどんと置かれていた。
「すごい。大きいベッド」
驚かされっぱなしで頭の整理が全くつかない緋紗を、直樹は抱きかかえゆっくりベッドに降ろす。
緋紗の横に座って、「突然でごめん」と、謝って説明を始めた。
今でも林業の仕事を続けていること、家は森林組合から木材を購入し和夫がペンション『セレナーデ』を建てたとき同様、ハーフビルドで自分も建築に関わったこと。
「よかった。直樹さんが森から離れていなくて」
「前の仕事に戻っていたら緋紗は僕を見向きもしてくれないだろ」
直樹は笑った。
緋紗も安堵の表情を浮かべる。
少し落ち着き、ベッドの滑らかな宮棚を撫でた。
「このベッドすごいですね。剥き出しの木がすべすべして光っててとても素敵」
「スカーレットオークなんだ。さすがにオデッセイウスのようにはいかなかったけど、動かせないベッドだよ。僕が作ったんだ」
「えっ」
「この木だけ輸入なんだけど、どうしてもこの木を使いたくてね。育ててると二、三十年かかってしまうし。そこまで待ってもらえないだろ」
直樹は檻ではなく自由に出入りできる寝床を作っていた。